協会事務局や京都市の障害者相談員として長年、自閉症の相談を受けてきました。わが子が自閉症と分かって悩んだり、周りから「育て方が悪いのでは」と責められるという訴えを聞くことがあります。
親御さんが第一にすべきは、自閉症を正しく理解することです。孤立せず、自分を責めないこと。私たち協会は、そのためのお手伝いができる団体です。メンバーは自閉症の当事者と親、医師、研究者らで、正会員は約350人。同じ親同士が何でも話せる場でありたいと考え、自閉症の学習会、講演会のほか、行政への働きかけなどを行ってきました。
自閉症は「コミュニケーションが苦手」などの特徴があり、先天的な脳機能障害と考えられています。発達障害の一つで、現在はアスペルガー症候群などを含め「自閉症スペクトラム」と総称されます。ただ、周りの理解や支援があれば支障なく社会生活を送れます。専門分野で才能を開花させる人も少なくありません。
1984年に生まれた私の長男が自閉症と診断されたのは5歳のころでした。どんな障害なのかを理解しようと情報を集め、90年に協会の前身「日本自閉症協会京都府支部」へ入会。米国で開発された支援プログラムの学習会に参加しました。97年、役員となり事務局で庶務全般を担当するようになりました。
私たちが目ざすのは当事者・家族の福祉や教育の充実とともに、社会一般に自閉症を正しく理解してもらうことです。自閉症児・者は、大声や急に走り出すなどの行動を見せる場合があります。はた目には奇異に映るでしょうが、フレンドリーで明るい性格の子が多いのも事実です。障害がよく理解されないまま、何か事件が起こると発達障害の人を危険視するような情報がネットで拡散されるのは残念でなりません。
啓発と情報発信のため協会では年3回、約20ページの会報を発行。大学や企業などにも配り、今年5月で135号を数えました。国連が制定した毎年4月2日の世界自閉症啓発デーは、京都市内でも自閉症児・者が公開の場でダンスや演奏を披露してアピールします。今春も京都タワーをシンボルカラーのブルーにライトアップした中で行われ高校、大学生の協力もあって盛り上がりました。
協会が、元の「京都自閉症児を守る会」から数え50年を迎える今年、将来への気がかりがあります。一つは「親亡き後」の問題。親御さんには元気な間に子どもの将来を考え、居場所確保など必要な準備をしてほしいのです。
もう一つは協会の会員減少です。働く母親が増えている影響もあると思われますが、子どもが学齢期を過ぎたり何か困った時、親同士が安心してつながり合える場は欠かせないはずです。私たち協会の役割は、そこにあります。自閉症児・者が当たり前の幸せな生活を送るため広く訴え、社会を変えていく活動に今後も粘り強く取り組んでいきます。