ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

愛注ぐ子育てをお手伝い

社会福祉法人「桜桃福祉会」
理事長 西村 日登美さん



 「乳幼児を抱え、子育てに不安やしんどさを感じているお母さんたちを助けたい。みんなで集まり悩みを語り合える場もほしい」。そう思い立ち14年前、仲間2人と任意団体をつくったのが、子育て支援活動に携わった最初です。

 やるべき支援が次々に見えてきて活動が広がり昨春、長岡京市で念願だった認可園「さくらんぼ保育園」(定員110人)の開園を果たすことができました。従業員の福利厚生を図る目的の企業主導型保育事業所「かえで保育園」(30人)と一体になった複合型保育園です。多くの人々の善意と協力に助けられ、いま新しい拠点で高まる保護者のニーズに的確に応える責任を痛感しています。


「一人一人の子どもが、皆から愛されている自覚を持てるように、これからも親子の支援を続けていきたい」と語る西村日登美さん(長岡京市神足垣外ヶ内、さくらんぼ保育園・かえで保育園)
 結婚して長岡京市に移り住んだ私は、幼児教室の講師を続けながら子育てサークルに所属しました。5歳の長男と1歳の次男を抱え、しんどさが高じた時期です。身近で助けてくれる子育て仲間のありがたさと必要性に気付き2006年、子育て支援の「いんふぁんとroomさくらんぼ」を設立したのです。

 多数の利用申し込みがあり、長岡京市中央公民館に登録して乳児対象の親子教室などの運営を始めました。09年、市から親子でふれあう「子育てひろば事業」を受託したのを機に、組織をNPO法人化。新たな活動の場を求め長岡京市内の店舗を借り、子育てひろばと同時に一時預かり保育やママカフェ、パパひろばなども開きました。

 乙訓地域は若い世代が多く、初めての育児は戸惑うものです。よその子と比べてわが子の成長に不安を持つお母さんには、広い視点でわが子の良いところを見つけ、安心してもらうことが大事。見つけ出すお手伝いが、私たちの仕事です。安心して愛を注ぐ子育てが、子どもの自己肯定感を高め健やかな成長に直結しますからね。

 待機児童が社会問題になる中で、15年には預かり保育を発展させ長岡京市で小規模保育園(0〜2歳)の運営に乗り出しました。翌年は向日市で小規模保育園を開園し、株式会社で運営しています。こちらは仕事上の私のパートナーで、子ども傷害予防の専門家、松野敬子さんが園長を務めています。

 小規模保育園が軌道に乗ったことで、私たちは「3歳以降の成長も見届けたい」と認可保育園の開設に夢を託していました。事態が動いたのは2年前です。JR長岡京駅東側に土地を所有する方から「福祉に役立つなら」と、用地提供のお話をいただき夢は現実になりました。土地は地元企業の大手電子部品メーカー村田製作所が取得。私たちが借地して園舎を整備しました。

 「さくらんぼ保育園」は長岡京市内、「かえで保育園」は村田製作所社員のお子さんを預かり、園内では病後児保育も行っています。手いっぱいで次を考える余裕はありませんが、最初の志を全うする意味では、認定こども園や学童保育への進出が、いずれ視野に入ってくると考えています。


にしむら・ひとみ
1962年滋賀県生まれ。奈良県で幼稚園教諭を務めた後、長岡京市に移住。2006年、子育て支援の任意団体を結成。地域に根ざした支援活動を展開。小規模保育園の運営も手がけ、昨春は社会福祉法人を設立して長岡京市に複合型保育園(定員計140人、職員48人)を開園した。