ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
パパもLet's子育て  < 4 > 歩き旅と、新たな旅仲間

徒歩登園さまざまな思い出

 

島本 和範



 「遅刻するから、早くして」。言いたくないけど、つい放ってしまうコトバ。保育園の登園準備、登園時刻、通勤電車の発車時刻など、毎日が時間との闘いです。そんな心の余裕のなさも、毎日保育園の先生方に温かく迎えていただくと、子育てモードから仕事モードに切り替えることができます。

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 私は子どもと触れ合う時間を確保するため、自宅から保育園までの約1・2`の道のりを徒歩で登園することにしました。出勤時刻・保育園との距離などさまざまな条件を満たさないといけませんが、徒歩登園は、私のオススメです。初めはベビーカーを押し、子どもの成長に従い、手をつないで歩いて行きました。毎日たった15分間ですが、さまざまな思い出があります。徒歩登園の効能として、街の中の文字が読めるようになり、しりとりで語彙(ごい)力がアップし、車のナンバーで数字が読み取れるようになり、鳥たちの数を一緒に数えました。季節や気温の変化、太陽の高さ、月の満ち欠け、雲の様子、虹、氷などを観察しました。さらに、登園経路に畑があるので、野菜の成長や花の色、果実の変化も観察しました。徒歩登園も時間がなければ、マラソン状態です。長男・長女とも、日々のトレーニングの効果で風邪をほとんどひきませんでした。徒歩登園は、子ども以上に私の方が楽しんでいました。

 メリットばかりを並べましたが、リスクもあります。歩いている途中にだだをこねた場合、肩車や抱っこで園まで歩く、いや走る覚悟や準備が必要です。不測事態への対応など、徒歩登園を通してパパのリスク管理能力も上がるかもしれません。忙しいパパにも、いや忙しいパパだからこそ是非、徒歩登園の機会を作ってみてください。

 長男が年長クラスの秋、私に転機が訪れます。長男の同級生のパパが「条件に合うパパ探し」をしていました。何の条件に合うのかを尋ねても、「今度に」と返事があるだけ。秋から冬になりました。そのパパが顔合わせというパパ飲み会を開催され、数年間同じクラスであったもののあらためて自己紹介をし、よそよそしく子どもの話をしていました。酔いがまわった頃、突然「説明しまーす」の掛け声とともにDVDプレーヤーから流れてきたのは、AKB48さんの動画。イヤな予感。「卒園式後の謝恩会。パパ達はこれやります!もちろん衣装・カツラあり」。それ以降、卒園式までの毎週日曜日の夕方3時間、パパ達が集い、慣れない踊りの練習を続けました。最初は気恥ずかしかった練習が、みんなでより完成度の高いものを目指して頑張っているうちに、部活のように楽しくなってきました。

 本番を無事に終え、踊り仲間のパパ達の結束は強固なものになりました。長男が卒園した後も、監督ともいうべきリーダーパパがバーベキューやキャンプ、ボウリング大会などを企画してくださり、パパ・ママ・子ども達全員が楽しめる関係が今も続いています。リーダーパパからいただいている絆は、パパ子育ての領域をはるかに超え、家族で子育ての領域です。


写真 しまもと・かずのり

1976年京都市生まれ。
26歳で結婚、小3男子・年中女子の2児の父、妻もフルタイムで勤務。
仕事は、京都市左京区の精密機器メーカーのシステムエンジニア。多忙な毎日を送る中、パパ子育ての楽しさを感じながら日々生活している。