ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
パパもLet's子育て  < 5 > 子育ての環境って

時代、家庭の事情が強く影響

 

島本 和範



 「お父さん、昼寝してんと遊んでよ」。よく私も子どもたちから言われますが、幼い時の夏休みに私が言い放ったものです。今回は、私の子育ての様子ではなく、私の子ども時代を振り返ってみます。

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 私の実家は、自営業で電気工事業を営んでいます。約30年前、エアコンは家庭や会社、お店などに設置が進んでいき、夏場は稼ぎ時の真っただ中でした。そんな繁忙期の中、私の父は平日朝早くから現場に赴き、夜に自分でシャツが脱げないぐらい汗びっしょりになって帰ってきました。月30日ぐらい働いていたかもしれません。

 そんな中、父がつかの間の休息中に、「遊んでよ」と言ったと思います。当時私は、小学校のクラスメイトが遊園地やプールに遊びに行った話をうらやましく聞きました。繁忙期の父に遊びに連れて行ってもらったことがほとんどなかったからです。夏休みの宿題に書く絵日記の題材がなくて困ったこともありました。私の子どもの頃は、子どものやりたいようにさせてくれる親が「いい親」と思っていました。幼い時代に遊びに行ったことが少ないという記憶は、今も変わりません。

 それに対して、家業が忙しく「仕事の手伝いをした」という記憶は鮮明に残っています。子どもの頃は、正直あまりよい思い出ではありませんが、週末や長期休暇の時の「手伝い」の経験は親になった今の私にとって「ありがたいな」と感じられるようになりました。

 今の子どもたちは、子ども向け職業体験施設がありますよね。当時の私は、父親の運転する軽トラックの助手席に揺られ、さまざまなお客様や建築現場に行くことがありました。言葉遣い、立ち振る舞い、道具の取り扱い、屋根の上や足場での作業など、気をつけないといけないこともありましたが、私が訪問したお客様や現場の職人さん達は、小さな子どもが手伝いをしている様子に「頑張っているね、えらいね」と声をかけてくださいました。また、お客様の家で敷居を踏んで、建築現場の棟梁(とうりょう)に「お施主さんの顔を踏むようなものだ」と怒られたことも、今となっては良い経験ですね。

 実家に立ち寄った時、よく母親は言います。「あんたが小さい時には、どこにも連れて行ってあげられへんかったね」そして、「孫たちはいろいろな所に連れて行ってあげて」と。

 私のコラムを読んでくださっている方の中には、「男が子育てなんて」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。私は、30年前の環境と現在の環境を比較して、実家での子育ての役割分担が誤っていたとは決して思っていません。

 子育ては、生まれ育った場所や時代に加え、子どもを取り巻く環境や事情に強く依存すると思います。そしてその依存の中で、パパの役割が明確になるのだと思います。私の父親としての採点結果は、将来子どもたちに尋ねてみようと思います。


写真 しまもと・かずのり

1976年京都市生まれ。
26歳で結婚、小3男子・年中女子の2児の父、妻もフルタイムで勤務。
仕事は、京都市左京区の精密機器メーカーのシステムエンジニア。多忙な毎日を送る中、パパ子育ての楽しさを感じながら日々生活している。