ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ある日突然、車いす

家庭での生活
きっちり時間割のように


清 水 哲

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子ども代わりの愛犬と近くの公園を散歩する清水さん夫妻(2010年6月、大阪府枚方市)

 朝は8時にホームヘルパーさんが来てくれるので、それまでには起きています。ヘルパーさんには、8時からだいたい9時半くらいまでの間に、歯を磨いて顔を拭(ふ)いてもらったり、お茶を作ってもらったり、さらには尿処理や掃除(そうじ)もしてもらいます。

 歯を磨いてもらう時には、その順番を決めています。下側の左の奥歯から始めてもらって反対側までいくと、今度は上側の左の奥歯から反対側まで。その後、口を閉じて表側を2往復。なぜ順番を決めているのかというと同じヘルパーさんだけがケアをされるのではないので、ケアをされる方によってやる事が違うとされている側にしてみれば、なんか間違った事をされているような感覚になるのです。だから、統一する必要があるのです。

 それと、私が感じた事ですが、ヘルパーさんも色々な方がおられます。学歴も違えば性格も違います。男の方も女性の方もおられます。器用な方も不器用な方もおられるわけですが、そんな中で一つ言える事は「利用者さんの事を思って良かれと思った事をされる」のですが、それでも力加減も違うし、1回にかける時間も違います。すると、間違った事をされているように感じてしまうのです。この時に私が思ったのは「嫁と姑の問題」に似ているのではないかと思いました。嫁も姑も別にもめようと思っているわけではありません。ですが、育ってきた世代も違えば、環境も違うし、考え方も違うのです。だから「良かれ」と思ってやった事でも間違った事をされているような感覚になるから問題が起こるんだと思います。

 月水金は、9時半から11時ぐらいまで訪問看護があります。

 訪問看護でやってもらうのは、排せつです。それと、ぼうこうに管が入っているので、ぼうこう洗浄をしてもらいます。頸椎(けいつい)損傷患者の場合、以前は尿からの感染が一番の死亡原因になっていたほどです。だからこのぼうこう洗浄は医療行為と規定されていて、看護師でなければやっていけない事になっています。私達にとっては、そんなふうにしてぼうこうに入れられている管をきれいに保つという事が自分の命を守るために必要なのです。目安として、1日に最低2リットル飲むように言われているんですが、私は約3リットルは水分を摂るように気をつけています。

 訪問看護を受けたあと、11時から12時までの間に昼食を食べて、12時から13時半まで入浴です。入浴は週に4回。本当はまず浴槽に漬かって、それから体を洗い、最後にもう一度浴槽に漬かるというふうにしたいのですが、ただでも規定の1時間半では短いので、現状は体を洗ってもらってから1回漬かるだけです。

 入浴後はフリーで、17時半から夕食。それから、また歯磨きなどをしてもらって、それがだいたい20時まで。そして、22時半から23時までの間に安否確認。その時には、顔を拭いてもらうのとお茶の用意、それに尿処理をしてもらっています。

 常に時間割みたいに何をするかが決まっているわけですが、人間の生活というのは、その日の気分や体調などによって変化するものだと思うのです。自分の身の回りの事ができない者は、ケアをして下さる方に少なからず合わせながら生活をしていかなければなりません。もっと融通の利く、自由な生活を送る事ができるようになったらいいなと思います。

しみず・てつ氏
1966年生まれ。高校3年の時には、PL学園野球部の1学年後輩、桑田・清原とともに日本高校野球選抜選手に選ばれた。著書に「桑田よ清原よ生きる勇気をありがとう」(ごま書房)、「車いすの不死鳥」(主婦と生活社)がある。