ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ある日突然、車いす

私にとっての今の社会
「普通」に接して欲しい


清 水 哲

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セミナーで講演する清水さん。この日も福祉の問題点を訴えた(3月8日、草津市)

 障害者の方にとって今の社会が理解があるか? 生活をしやすい社会か? と聞かれると私は迷わず「NO」と応えます。

 ある電化製品の量販店に行ったところ、店員さんは私に熱心に商品の説明をして下さいます。それで、いざ購入という時になると店員さんは私にどうするのかを聞くのではなく、私に付き添ってきた人に聞くんです。だから、「買うのは私です。私に聞いて下さい」というと「すみません」と言って下さるんですが、すぐに私以外の人に「どうされますか?」と聞かれるんです。こういう時には私は絶対に買わないようにしています。余りにも失礼だからです。これが日常茶飯事ですから困るんですよね。

 私が常々感じている事ですが、日本人の方は障害者の方に接し方がわかっていないと思います。と、言っても何も深く考える必要はいりません。健常者の方と接するように「普通」でいいんです。いつも友達と接する時のようにすればいいだけなんです。

 障害者の方との付き合い方というか接し方がわからないというのもわからないでもありません。なぜなら、今の社会を考えると障害者の方との接点というのはほとんどないからです。

 障害者の方も健常者の方もこの同じ社会で生きていかなければなりません。ですが、障害者の方の中には1人で簡単に外出ができる方もおられれば、私みたいに人の手を借りないと絶対に外出できない方もおられます。しかも、自立支援法には「ガイドヘルプサービス」があるんですが、1カ月にそのサービスが利用できる時間が私の場合「80時間」と決められているのです。これが何を意味するのかというと「1カ月に80時間しか外出ができないという事です。こうなると障害者の方と健常者の方との接点が少なくなり、障害者の方への理解もできなくなってしまうと思うのです。人間であれば、好きな時に好きなだけ外に出たいと思うのは当たり前の事だと思いますが、今の日本ではそれが認められていないのが現状です。

 このガイドヘルプサービスですが、自立支援法の前の生活支援補助方式の時にはガイドヘルパーさんが車の運転をしてもいい事になっていましたが、自立支援法に変わってからはしてはいけなくなり、ますます障害者の方が外出しにくくなりました。

 上の方は簡単に「ガイドヘルパーさんは運転をしてはいけません」と通達すればいいですが、障害者の方にしてみれば、公的機関の交通を使うという事はとても不自由な事です。

 以前、私は朝のラッシュ時に電車に乗った事があるんですが、この時は駅員さんに「混んでる時は避けて利用して下さい」と言われた事があるんですが、私も混雑時に乗りたくはありません。ですが、仕事の都合でどうしても乗らなくてはいけなかったのに、そういう事を言われても困るのです。それとか、私の家の一番近いバス停は、道路の幅が狭く、バスからスロープを出せない状態です。公的機関の交通が全てバリアフリーになっている訳はありません。そういう状況で「ガイドヘルパーさんの車の運転はしてはいけません」というのはおかしいと思います。幼稚園のバスみたいに決まった人が運転して決まった人しか乗らない登録制にするとか、2種免許を取れば認めるとか、なにか代替案を出してくれないと困るのは障害者なんです。その辺のところを考えて制度も作って頂きたいと思います。

(清水哲さんの連載は今回で終わり、7月から第3日曜に笹森理絵さんの「発達障害を個性に変えて」を掲載します)

しみず・てつ氏
1966年生まれ。高校3年の時には、PL学園野球部の1学年後輩、桑田・清原とともに日本高校野球選抜選手に選ばれた。著書に「桑田よ清原よ生きる勇気をありがとう」(ごま書房)、「車いすの不死鳥」(主婦と生活社)がある。