ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
きょうだいとして 支援者として…5

あとに続く仲間のためにできること
我慢せず、自分の人生を楽しんで(2016/03/22)

田中 一史



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なかよし会の活動できょうだいや支援者らと陶芸を楽しむ田中さん=手前中央(2月、京都市南区・市南青少年活動センター)

 「きょうだいが主役」となって楽しめる場としてできた「なかよし会」は今年で15年目を迎えます。これまでたくさんのきょうだいが参加し、なかには小学生の頃から高校生まで続けている子もいます。長く続けてきたからか、参加するきょうだいたちには「なかよし会では『きょうだい』『障害』についての話し合いをする」という心づもりができていて、きょうだいとしての経験や思いにとどまらず、自分の将来のことや兄弟姉妹の障害特性のこと、さらには兄弟姉妹が利用する作業所やグループホームのことにまで話が発展するまでになりました。参加するきょうだいたちはもちろん、支援者やきょうだいの立場で参加するスタッフや、送り出してくれる保護者にとっても大事な場所に育っていると思います。

 この15年のあいだに、発達障害や自閉症スペクトラムについての理解がひろがり、家族や身近な人に何らかの障害を持つ人がいるということは決して珍しいことではなくなっています。子どもの発達や育児に不安を持つ親御さんに対しても、以前にくらべて相談・支援の場が整備され、親同士で思いを話し合う集まりも増えています。一方、「きょうだい児」も実はたくさんいるはずなのですが、彼らが過ごす学校や社会はまだまだ障害のことを当たり前に話したり自然に理解してもらえる雰囲気ではなく、普通に過ごしていたらきょうだいとしての思いを意識したり、同じ立場の仲間の存在を知ることが無いまま、悩みや葛藤を抱えこんでしまうことでしょう。

 私は「きょうだい」として育ち、結果的に障害のある人の支援者という立場を選びました。周りから強制されたわけでもなく、後悔もしていませんが、小さい頃に同じ立場のきょうだいに出会って話を聞いていれば、もう少し楽に考えることができたのかもと思います。あとに続くきょうだいたちには、今の自分自身も我慢せずに楽しんでいいと思えるように、そして同じ立場の仲間と出会い、大人のきょうだいの体験や福祉施策や支援に関する情報を得ることで、自分の人生を無理のない形で選べるようになってほしいのです。そのために私は今後も「なかよし会」の活動を続け、このような「きょうだい支援」の輪をひろげていきたいと思います。

 また、「なかよし会」には多くのボランティアスタッフが関わってきました。多くは教育や福祉、医療などの分野で支援者として活躍している方々ですが、皆きょうだい児との交流を心から楽しみ、大人になったきょうだいたちと飲み会がしたいと話すまでになっています。そしてスタッフとして参加した大人のきょうだいも、話し合いに参加する中で自分の気持ちが整理されていくと語っています。私もそうですが、スタッフにとっても「なかよし会」はかけがえのない出会いの場所になっています。支援者や大人のきょうだいで関心がある方は是非一度参加してみてください。


たなか・かずし
1974年、大阪府生まれ。
2000年、京都府立医科大卒。京都府立医科大付属病院小児科などで勤務後、06年から京都市児童福祉センターなどで児童精神科医師。
08年よりきょうだい児支援の会「なかよし会」代表。