ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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京都市包括センターの現状


高齢者の実態把握し
地域と連携に積極的


全戸訪問など多い仕事量、対策望む声


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「高齢サポート」の愛称を持つ京都市の地域包括支援センターの一つ。高齢者施設を抱える社会福祉法人や医療福祉法人が委託を受けて運営に当たっている(京都市中京区)

 お年寄りの介護や生活の相談に乗る、支援の窓口として設立された「地域包括支援センター」は発足後、どのような状況にあるのか─。NPO法人きょうと介護保険にかかわる会(梶宏理事長)が京都市地域包括支援センター(包括センター)に関する聞き取り調査を報告書にまとめた。

 同会は、介護保険制度オンブズマン養成事業(研修会)や介護サービス第三者評価機関としての活動などを行っており、設置後6年が経過した包括センターの状況や課題を明らかにしようと、市内61カ所のうち28カ所を選び2012年9月から10月にかけて調査し、原則としてセンター長から聞き取りを行った。

 相談業務の状況では、すべての包括センターが地域の「高齢者の実態把握」「ネットワーク構築」が「できている」と自信を示し、地域から要請があれば工夫・配置して高齢者宅に「訪問活動できている」と自己評価した。

 また、包括センターに期待されている「権利擁護事業」「成年後見人制度の利用促進」についても「できている」としている。

 地域との連携でも民生委員や老人福祉員とは包括センターの大半(89・3%)が「積極的」に連携・協力をはかっており、学区社協については高齢者の見守り活動や集いの場を通じて「かかわりを増やしたい」との声があった。

 半面、京都市や福祉事務所など自治体に対しては「もっと積極的に関与してほしい」「保健センターの動きが鈍い」「何でも包括センターにやれといわれてもできないこともある」など、意見や注文も相次ぎ、「行政も、包括センターも、今後の支援の到達目標が見えておらず、苦慮している」と制度上の課題を指摘する声もあった。

 また市は昨春から65歳以上の単身者への全戸訪問を新規事業として掲げ、包括センターの職員がこれに従事しているが、調査では最多の22カ所がこの事業を「現状の課題」と答え、中には「連絡がとれない人、とれても訪問不要という人もいる。日常業務と両立できない」などと悲鳴にも似た声もあった。

 包括センターの課題としては、「仕事量の多さ」「職員の待遇」などが挙がり、あるセンター長は「仕事も厳しく業務量も多いなどで退職者が相次ぎ、仕事の積み重ねができない」と訴えた。

 「仕事の上で一番大切にしていること」については「相手の立場に立った相談、迅速な対応、職員間のチームワーク、関係機関との連携、身だしなみ、心のゆとり」などの回答があり、職員の真剣な活動ぶりが伝わってきたという。

 同会では市に提言する一方、市民活動として今後も調査を継続していきたいとしている。


地域包括支援センター 
介護保険法の改正により2006年4月に新設された。責任主体は市町村で、主任介護支援専門員、社会福祉士、保健師の3職種を配置することが義務付けられ、介護予防ケアマネジメント、総合相談支援などの事業を行う。全国4224カ所中、京都市には61カ所ある。市は「高齢サポート」の愛称で、社会福祉協議会を含む社会福祉法人や医療福祉法人に委託している。