ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
見る・聞く・訪ねる

京都新聞「愛の奨学金」今年度128人

1707万円贈呈 学用品代など手助け


善意が開く未来への道


写真
贈呈式で奨学金を受け取る学生・生徒(7月20日、京都市中京区の京都新聞社)

 家庭の事情などで学業を継続できなくなったり、進学が困難になったりする若者を支援しようと、京都新聞社会福祉事業団が「愛の奨学金制度」を設けて50年近くになる。奨学金の受給者は1965(昭和40)年の活動開始からこれまでに7千人以上にのぼり、同制度は教育界からも高い評価を得ている。今年度も同制度による贈呈式がこのほど行われた。それを機に、奨学金事情や若者意識などをまとめた。

 同事業団の「愛の奨学金」は「誕生日おめでとう」コーナーと「奨学金」事業協賛寄付金(京都新聞紙上で紹介)によって主に支えられている。贈呈額は大学・専門学校生に年額14万4千円。高校生は同7万2千円で、返済の必要がない点も大いに喜ばれている。今年度の申請者は300人で昨年より4人増えた。内訳は、大学生が70人、専門学校生が12人、高校生が218人だった。地域別では京都市内がほぼ半数を占め、京都府内、滋賀県内と続く。申請者のうち62%が母子世帯だった。このほか、東日本大震災による避難者家族や例年のように交通遺児からもあった。母子家庭からの場合、パート収入などで生計を維持するのが精いっぱいという厳しい経済事情が背景にある。また、親が病気になったとか、世帯主がリストラで退職せざるを得なくなった、自営業をしていたが、売り上げが減少し不振を極めたなどの理由からの申請も少なくない。

 選考の結果、申請者300人のうち、128人が認められた。内訳は大学生や専門学校生が42人、高校生が86人だった。このほか、養護施設の生徒161人に奨学激励金(一人3万円)が贈られた。選考委員の一人、京都青年会議所の小林育朗理事長は「『愛の奨学金』がこれから生きて行かれる長い人生の手助けになれば、幸いです」と話した。

 今年度の贈呈式は7月20日、京都新聞社で行われ、総額1707万円が贈呈された。式で同事業団の直野信之常務理事は「多くの人々から寄せられた善意をしっかりと受け止め勉学に生かしてほしい」と励ました。奨学金の贈呈を受けた大学二年の男子学生は「余裕がないだけに、この奨学金はありがたいです。大切に使わせてもらいます」と笑顔だった。厳しい経済事情だけに、贈呈を受けた学生の喜びは大きかった。だが、まだ必要としている学生は多い。それだけに、より一層の寄金が期待されている。

 同事業団では、京滋の高校を対象に初めて「愛の奨学金」に関するアンケートをこのほど実施、35校から回答を得た。

 それによると、同奨学金の活用方法では、▽参考書、問題集の購入▽制服代▽クラブ費用▽通学交通費▽模擬試験代▽修学旅行費▽入試費用─などに使われていることが分かった。

 「生計が苦しくクラブ活動や資格取得の挑戦を断念する生徒がいるのが実情です。この奨学金のようにまとまったお金を頂けるのは非常にありがたい」(滋賀県内高校)、「大変素晴らしい事業だと思います。これからも一人でも多くの生徒の力になってほしい」(京都府北部の高校)、「人数制限がなく幅広く応募でき感謝しています」(京都市内高校)などの声が寄せられた。高校生の場合、授業料が無償化されたとはいえ、なおクラブ活動費や修学旅行費などの負担を重く感じる家庭は多く、奨学金のおかげでそうしたことが実現できている実態が明らかになった。

 また養護施設対象のアンケートでも同様に有効活用されている実情が明らかとなり、「通学費用や通学用自転車購入とか筆記用具などに使っています」「生徒はアルバイトでこれだけの金額を得るのがいかに大変かを知っているので非常に感謝しています」などの声が寄せられた。