ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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見えにくい障害 自立へ理解求めて
将来見据えた支援が必要

高次脳機能障害支援家族会「里やま」


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家族会が開いた月例会。近況や悩みなどを語り合う(京都市上京区)

 各種福祉団体が拠点を置く京都社会福祉会館(京都市上京区)は二条城の北側にある。そこに毎月第2日曜日、高次脳機能障害支援家族会「里やま」のメンバーが集う。11月10日の月例会に参加したのは家族ら6人。それぞれの近況や悩みなどについてざっくばらんに語り合う。

 高次脳機能障害とは交通事故などによる脳へのダメージや脳出血などの脳疾患によって脳が損傷され、さまざまな障害が出ることを指す。「見えにくい障害」と言われ、見た目には普通の人と変わるところがない。だが、脳に障害を受けた人には、さまざまな障害が出る。▽言葉が出にくい▽記憶がしにくい▽疲れやすくなる▽人ごみに入ると、頭が痛くなる▽ひとつのことにすごくこだわるようになり、感情をコントロールしにくくなる▽気持ちが落ち込むことが多くなる─などだ。その結果、自立して生活出来ないケースに陥ることが多い。

 こうした現状を打開して、家族同士の交流を図り、お互いの悩みの解消や高次脳機能障害への理解を求める活動を展開しようと、同家族会は昨年5月に発足した。基盤となったのは、高次機能障害支援の生活訓練事業所を開設する「つくしの会」だった。家族会の会員はまだ11人だが、同会の川崎祥子会長は「それぞれがばらばらではいけない。集って助け合って悩みを語り合い、行政に対しても要望をしていこうと思っています」と話す。

 家族会のメンバーの一人、Aさんの場合、今から12年前、20代の息子さんがバイクで事故に遭い、高次脳機能障害者になった。車いす生活を余儀なくされたが、最近は少し歩けるようになったことを喜ぶ。Bさんの場合は14年前に10代の息子さんが突然の脳内出血で倒れた。当初は失語症があり、絶望感などからうつも発症して大変な闘病生活になったが、今ではクっキーづくりや喫茶分野での接客などに活躍できるまでになった。

 京都府などによると、こうした脳機能障害の人は京都府内で約1万7500人おり、毎年1300人のペースで増えているという。

 高次脳機能障害生活訓練事業所「つくし」は同会館にあり、音楽やヨガ、ゲーム、料理などを専門職の方やインストラクターの指導・協力の下に行い、生活リズムの再構築を目指している。会員の一人は「リハビリは長く続けないといけないのです。2年や3年でめどが立つものではなく、長期的な支援が不可欠です」と強調する。生活訓練には、将来を見据えた総合的な訓練や十分なケアが受けられる体制作りが急務だということでもメンバーは一致している。

 府内には京都市以外に園部や福知山、亀岡、長岡京などで家族会の動きがあることから、連携してこの病気の理解促進を社会に呼びかけるとともに、府内での家族会連合会の結成も大きな目標としている。それに、他の福祉関係団体との交流も進めるほか、行政への働きかけも強化したいという。

 川崎会長は「高次脳機能障害となる人は年々増えています。そうした方々や家族の方々に呼びかけて、私たちの活動に参加して輪を広げ、もっと盛り上げて行きたい。就労支援にももっと力を入れていきたいし、現在行っている社会復帰の一環としての生活訓練事業所も3年で打ち切りというのではなく、継続して行政の支援が得られるようお願いしたい」と訴えている。