ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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雇用で変わる意識、全体のプラスに

シンポ「障害のある人の就労支援」


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熱心に討議が行われたシンポジウム(京都市中京区、京都新聞文化ホール)

 障害のある人の就労を促進しようと、シンポジウム「障害のある人の就労支援」(京都新聞社会福祉事業団主催)がこのほど京都市中京区の京都新聞文化ホールで開催された。シンポには障害者を雇用する企業経営者らが参加、現状や今後の展望を力強く語り合い、一層の就労支援を誓った。出席者約120人はパネリストらの雇用の実情などの発言に聞き入った。

 シンポでは、障害者の就労支援で山城地方を中心に活動を続ける「はちどりネットワーク」の林剛・EL―LISTON代表取締役が「障害者とともに生き、可能性を追求していくことが大切だ。そういう中から『化学変化』が起こり、ネットワークが強化されていく」と活動経過を説明した。新潟県から参加した関係者の代表が「新潟でも遅まきながらこうした就労支援の動きが出て、企業連携のネットワークを作った。このシンポでさらに学びたい」と語った。

 続いて実践報告があり、「信じれば可能性は広がる」と題して新晃自動車工業代表取締役の辻尚宏さんが統合失調症の若者の雇用事情を語った。この若者は短時間のバイトからスタートし段々業務に慣れて正社員として働いているという。辻さんは「彼の真面目な姿に働く原点を見ました。彼から教えられたことは多い」と指摘した。

 2番目の実践報告は業務用クリーニング業のアグティ代表取締役の齊藤徹さん。「共に働く仲間へ〜企業と福祉の共同事業」と題して発表、「12年前に大津市から久御山町に移転した際、近くに福祉施設があった。これがきっかけとなってお付き合いが始まった。いかに続けて仕事をしてもらうかが大事だ。事業戦略として位置付けながら雇用拡大につなげていきたい」と継続していく大切さを強調した。

 また「『はちどりネットワーク』から学び得たもの〜乙訓での取り組み」と題して、しょうがい者就業・生活支援センター「アイリス」のセンター長、内田依子さんは「行政、企業、支援者、それぞれに立場が違う中、どんなふうに知恵を出し実行していくか、手探りのなか、頑張っていきたい」と話した。

 このあと、「人を生かす経営を地域の文化に」をテーマにパネル討論が行われ、実践報告をした辻さんをはじめ、林さん、小都里代表取締役の小泉浩さん、ファンシステム代表取締役の小山和幸さん、シオン代表取締役の久田和泰さんの5人が現状と課題を話し合った。

 辻さんは「自動車整備士になりたいという若者の夢をサポートしたい。彼が働いてくれることで職場の雰囲気がいい方向に変わった」と雇用側の体験を語り、「次第にこの障害のある青年の力になりたい、役立ちたいと思うようになった」と自らの心の変化を振り返った。このほか、職場の変化について言及するパネリストも多く「障害者を雇用するようになってからバイトや社員の定着率が向上した。採用方法も変化してきた。求職者のいいところを見つけてそこを伸ばそうとするようになった」と指摘したほか、「障害者の雇用によって経営側の意識も変わり、それが会社全体のプラスになることが分かった。もっと発信していきたい」「障害者の心にそっていくことが、地域の文化の向上に役立つと思う」と、障害者の雇用が職場に好影響をもたらす実情なども語った。