ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
難病患者 就労への挑戦

(8)人生いろいろ、働き方もいろいろ、商品もいろいろ

手芸の自社製品、ネットでも販売中

上野山 裕久さん



写真
NPO法人京都難病支援パッショーネがネット販売しているオリジナル商品
 難病患者は皆どんな仕事をしてるの?

 最初はパソコンを使った仕事のみであった。

 ショッピングサイトの運営をスタートさせた。自社オリジナル商品が無かったので受託販売の形式をとった。多額の設備投資の必要もなく、在庫も持たず開始できる事業の選択肢は限られていた。

 販売商品を委託してくれる取引会社と良好な関係を築き、ウェブに関連する業務、例えばホームページの制作やリニューアル、更新業務の受注を狙うことも視野に入れていた。初対面で「ホームページ作りましょうか。リニューアルしましょうか、更新任せてください」だけの単調な直球営業では、ポーカーでストレートフラッシュを狙うぐらい受注は困難であることは感覚で理解できた。

 受託商品を販売し、お互い利益を分かち合い、関係を築いた上でウェブ制作の受注に、よしんばそれがダメでもチラシやパンフレット作成の受注につないでいこうという狙いがあった。「仕事とは、常に二手三手先を読んで行うものだ」

 実際はどうだったのか、受託契約を交わした会社は20社以上、その売り上げは「ぽつぽつ」「はらはら」1年後にはししおどしの「かこーん」になってしまった。サイトに訪れる人数、セッション数等の分母を上げていく具体的な施策を打てなかったのが要因であった。

 受託商品の売れ行きが乏しかったので二手三手先の業務のプレゼンができる場面は少なかったが、チラシやパンフの受注にはちょっぴりつながった。

 以上パソコンを使った仕事の話でした。

 ここからはモノづくりの話、時計の針をグリグリ右に回して現在に戻します。ショッピングサイトは「パッショーネ工房」に様変わりして受託商品ではなく、オリジナル商品で構成されています。商品の紹介にお付き合いください。

 写真@「こぎん刺し」の技法を用いた髪留めとブローチ。「こぎん刺し」は津軽地方の伝統技法で日本三大刺し子のひとつです。他にも伝統的な松笠柄の商品もあります。

 Aは「刺し子ポーチ」。HKT48の指原莉乃さんと関係はないとのことです。左上のAもサッシーじゃなかった刺し子です。

 Bは「折り紙ピアス」。折り紙で作ったユニットを樹脂コーティングしたものです。素材は紙なので軽い付け心地が好評いただいております。

 Cは「ぷくぷくブローチ」。桃太郎や浦島太郎シリーズ等あります。「おにぎりは山下清画伯シリーズかな?」と聞いたところ「んなわけねーし」という顔されました。

 Dの丸い三つは「刺繍(しゅう)ブローチ」。内一つは「こぎん刺し」の技法を使ってます。

 Eの丸い穴あきは「サークル刺繍ブローチ」です。フレンチノットという技法を使っています。「ドーナツですか?」と聞くと、「リースです」と軽く返されました。

 写真にはありませんが、草木染もしています。染料の植物栽培(1次)、染め加工(2次)、販売(3次)と小さいながらも6次産業になります。

 ごひいき賜りますようお願い致します。


うえのやま・ひろひさ
1967年、和歌山県串本町(旧古座町)生まれ。
和歌山県立古座高卒。京都府城陽市の会計事務所で10年勤務。35歳の時、重症筋無力症(難病)を発症。41歳、合同会社パッショーネを設立し難病患者の就労を支援する活動をスタート。43歳、NPO法人京都難病支援パッショーネを設立。45歳、就労系福祉サービス事業所を設立。50歳。