ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
難病患者 就労への挑戦

(9)「商品開発は99%の努力より1%の閃(ひらめ)きが大事やで」(トーマス・エジソン)

三者三様 手作り品に愛を込めて

上野山 裕久さん



写真
こぎん刺しと折り鶴ピアスの商品を作るスタッフ(本人提供)
 先月商品紹介しましたところ、大勢の方が当法人ショッピングサイト(パッショーネ工房)に来店してくれました。ありがとうございました。また商品をお買い求めいただいた方、重ねてお礼申し上げます。

 それと「写真の商品、ショップにねーじゃん」とのご指摘もちょうだいしました。この記事が掲載される頃には少し増えていますよ…でもね…たぶん…きっと…。

 また商品が生まれた経緯を知りたいとの声もいただきましたので、今回そのお話をします。

 商品開発担当エヌ氏にインタビューしました。恥ずかしがり屋さんの彼女は本名はチョットというので星新一ショートショート風にエヌ氏としています。

 上野山「なぜ、こぎん刺し商品を作ろうと考えたの?」

 エヌ氏「どこも取り組んでいないモノに挑戦したかった。月並みはヤダ。伝統工芸にもこだわっていきたいし」

 上野山「京都の伝統工芸じゃあなかったよね?」

 エヌ氏「習得して商品化し販売できるまでの時間を考えると選択肢は限られる。そこに取り組んでいるところは沢山あるので二番煎じはヤダ。だから京都の伝統工芸にはあまりこだわらなかったの」

 上野山「で、どうして青森県は津軽の伝統工芸なの?」

 エヌ氏「特に青森県を意識したわけではなく、たまたま津軽の伝統工芸であっただけ。こぎん刺しには前から目をつけてたし、へへっ」

 上野山「こぎん刺しブーム来てんねや」

 N田「イグザクトリー」

 パッショーネとして伝統工芸に関わっていく狙いを以前から持っていた。伝統工芸は手工業であることが定義の一つである。つまり効率よく機械化し大量生産すればその時点で伝統工芸ではなくなるのだ。故に伝統工芸に取り組むのはわれわれのような法人には適していると判断した。

 西D「よそにはこの商品はマネできないよ、にひひっ」

 図面を読んで、または自ら図面を描いてその通りに刺していく、手先の器用さと根気が求められる。当法人には作り手が3人います。下地の色、幾何学模様のデザイン、糸の色の組み合わせ、作り手三者三様の個性が出るのが面白い。一つの作風に偏らないので、幅広いお客様から支持を得る要因にもなっています。

 写真の下、こぎん刺しです。紺色の生地に白糸を刺す基本的な柄ですが、彼女普段はアンディ・ウォーホルのような色彩で表現してみたり、驚かせてくれます。

 写真の上、小さくて分かりづらいですが、折り紙ピアスです。この商品が生まれるキッカケは、多面体折り紙を題材に、ある会社と商品開発をしていました。作り手のサガなのでしょう。どこまで小さく作れるかを追究していくうちに「ここまで小さく軽いのならピアスにもできるで」というノリで生まれた商品です。外国人観光客にはくす玉より折り鶴ピアスの方が人気ですね。

 商品パッケージのデザインも自前でしています。展開図から作成した洒落乙な箱も組み立てます。

 商標登録も自前でしちゃいます。

 個人の能力は最大限に生かす、それがパッショーネの主義だ!


うえのやま・ひろひさ
1967年、和歌山県串本町(旧古座町)生まれ。
和歌山県立古座高卒。京都府城陽市の会計事務所で10年勤務。35歳の時、重症筋無力症(難病)を発症。41歳、合同会社パッショーネを設立し難病患者の就労を支援する活動をスタート。43歳、NPO法人京都難病支援パッショーネを設立。45歳、就労系福祉サービス事業所を設立。50歳。