ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
難病患者 就労への挑戦

(10)ワールドビルディング♪何がでるかな♪

社会とのつながり アニメ動画に

上野山 裕久さん



写真
アニメーション動画作成のためのミーティング=本人提供
 年間約40人。パッショーネに見学に来られる人数です。外国人もたまーにいます。日本の大学生でもある中国、香港、韓国出身の3人。難病患者の就労など福祉に関する話を聞きたいとのこと。おのおの若干の違いはあるがザックリ言うと自国の社会保障制度、世間の反応、個人の価値観、どれを挙げても日本のはるか後ろを歩んでいる印象を持ったようだった。国家予算に占める社会保障費の割合は確かに日本より低い。しかし香港では1人当たりの予算は日本を超えているだろう。韓国、中国も年々社会保障費の予算割合は増加している。よって現状国家施策では大差ないと思う。

 ならば遅れていると印象付けるのは何なのか。実生活での両親、親戚、学校での友人など、普段の日常会話における難病患者や障害者の話題の触れ方に品がない傾向を感じているようだ。しかしこれは中国や韓国にだけ言えるものではなく、日本でもさほど変わりないと思う。違いの要因は日本の恥の文化が顕在化を抑えているだけかもしれない。

 最近こんなことも聞いた。福祉先進国の西欧に学べ、と研修に行く。就労の例でいうならそこにガッツリ働いている障害者がいる。おのおのの能力に合致したさまざまな分野で活躍している。日本も同様だ。何ら引けは感じない。しかし西欧では重度の障害者が就労分野で表に出てこない。全ての西欧諸国ではないにせよ重度障害者が就労で活躍している実感がなかった。日本では何らかの社会とのつながりを持つため軽作業に従事するなど可能性を具体的に探っている。西欧で研修を受けた方いわく、もしかすると重度障害者に対しての支援は世界で日本が一番進んでいるじゃないかとの見解でした。

 今年も外国から見学に来られました。はるばるアメリカ西海岸から。ローラ・チャハノウィッツさん、南カリフォルニア大学の博士論文執筆のネタになりゃしないかとパッショーネの重い玄関引き戸に手をかけました。ご自身が関節炎という見えない障害を抱えていて、その人生をワールドビルディングという方法論で映像などの作品として表現しようとしています。

 その流れのなかワールドビルディングのワークショップをパッショーネのメンバーで受けてみた。これって何ぞや? 世界観の構築をして多方向的に物語を生成する手法。う〜ん一言で表現するのは難しい。そのワークショップをへて何度か掘り下げていくなかで生まれた多様な物語の一つをアニメーション動画にしてみよう。

 写真はミーティングを開いている時の様子で、左端の小芝居してるのが映像クリエーターの深田祐輔さんで通訳でもお世話になっています。なぜかカメラ目線の私(右から3人目)、左から3人目がローラさんです。

 間に合えば来年の3月10日の当法人イベント「難病カフェ2019」でお披露目したいと思っています。初孫の初めてのお遊戯会を見守るような甘ーい瞳でご覧いただけるとうれしく存じます。視覚・聴覚に衝撃を与え、映像制作の仕事を受注できる水準に達することを目標に精進してまいります。


うえのやま・ひろひさ
1967年、和歌山県串本町(旧古座町)生まれ。
和歌山県立古座高卒。京都府城陽市の会計事務所で10年勤務。35歳の時、重症筋無力症(難病)を発症。41歳、合同会社パッショーネを設立し難病患者の就労を支援する活動をスタート。43歳、NPO法人京都難病支援パッショーネを設立。45歳、就労系福祉サービス事業所を設立。50歳。