ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

エンディングノート
元気なうちに準備を



 インターネットの書籍販売サイトで「エンディングノート」と入力し検索すると200冊を超える書籍がヒットした。これほどの種類が販売されているとは驚いた。最近では自治体でも作成しているところがあると聞くから、その何倍もの種類が世に出ているのだろう。


 「終活」という言葉があるが、この言葉には相続や介護、医療、住居、葬儀など人生の最期を迎える準備をするとともに、自分の最期を見つめることで、よりよく生きるという意味があるという。エンディングノートは法的に有効な遺言書ではないので注意が必要だが、「終活」の必需品とも言えるだろう。

 京都府社会福祉協議会でも7年前よりごく簡単なものだがエンディングノートを発行している。作成のきっかけは、社会福祉協議会が行っている福祉サービス利用援助事業(地域福祉権利擁護事業)を利用する人たちのさまざまな人生に寄り添う上で大切だと考えたからだ。この事業では認知症などによって判断能力に不安をもつ人に福祉サービス利用の手続き援助や日常的な金銭管理を行っているが、利用者の中には家族など身近な支援者がいない人も少なくない。

 こうした人たちのいざというときの連絡先や、終末期の思いなどを聞き取っておくことも目的の一つだが、それ以上に、どのような人生を歩んでこられ、これからどんなふうに暮らしたいのかを語ってもらうことに意味がある。また、大切な人に思いを伝えるためにも活用してもらいたいと願っている。タイトルをエンディングノートとせず、「わたしの綴り帖〜語りたいと聴きたいをつなげる小冊子」と名付けたのはそのためだ。

 例えば、冊子の中に好きな写真を貼ってもらうページがある=写真。写真は、忘れられない思い出の写真でもいいし、いまのお気に入りの風景写真でもいい。その写真を選んだ理由や写したときの話の中に、その人ががんばってきたことや人となりがにじみ出る。尊厳とは、まさに、その話への共感から生まれるのだと思う。

 自分の最期がいつ訪れるのかは誰にもわからない。老若男女を問わず、みなさんも一度、よりよい人生のためにエンディングノートを手にしてみることをお勧めしたい。

 「私の綴り帖」を手にした方のちょっとした笑い話に「写真のページには遺影にしたい写真を貼るのかと思った」や「親に渡したら、早く死んでほしいということかと言われた」などがある。人生の最期のことは、笑いながら考えられる元気なうちに準備しておくことが大切である。

(社会福祉法人 京都府社会福祉協議会)