ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

セラピードッグ
育成パターンは多様



 人が犬に触れたり、犬と遊んだりすることで、癒やしや安心感、前向きな意欲の向上、教育的な効果が期待できる活動を「ドッグセラピー活動」といい、その活動のために訓練した犬を「セラピードッグ」といいます。狭義には、医療の専門家による患者の療養目的のための活動をいいますが、広義には、療養目的に限らず、教育的効果や情緒的効果が期待できる活動を総じて「ドッグセラピー活動」といいます。セラピードッグは、人や他の犬に対して落ち着いて対応でき、ハンドラー(犬に指示・指導する人)とコミュニケーションが適切にとれる一定の訓練レベルの確保と、衛生面に十分配慮し清潔さを保ち、日常的に健康管理ができていることが必要です。


 人と犬との共生社会が形成されている欧米で先行している取り組みで、国内では20年程度の歴史があるといわれています。

 国内のセラピードッグ育成には主に@遺棄などされた犬を団体が保護し育成A医療・福祉団体が主体となり適性の高い犬を選別し育成B一般家庭で暮らす犬(=家庭同伴犬)が一定の訓練を重ね活動─の方式があります。国内にはセラピードッグの公的資格がないため、いずれの方式も独自の活動基準でセラピードッグを育成しています。

 @の場合、動物保護・愛護が主要目的のため、ドッグセラピー活動のニーズを持つ施設などと連携した展開が必要です。また、保護犬の全てが必ずしもセラピードッグの適性が高いとは限らないため、活動規模や質を維持するための工夫が必要です。

 Aの場合、ドッグセラピー活動のニーズに基づいた計画的な育成ができます。一方で、育成費用は、ある医療法人によると、ハンドラーなどの人件費や犬の食費、医療費などを含め1300万円ともいわれています。また、寿命10〜15年程度の犬が実際に活動できる年数を考慮しながら、代替わりへの工夫が必要になるため、@の保護犬やBの家庭同伴犬との連携などによる活動継続の担保が必要です。

 Bの場合、活動への参画意欲のある飼い主と家庭同伴犬が民間の認証組織で訓練をし、一定レベルを目指します。しかし、認証されても実際にニーズを有する活動先とのマッチング機会が少なく「ペーパー」セラピードッグになっている例が見受けられます。私どもNPO法人アンビシャスは設立11年目を迎え、病院・老人ホーム・学校などの累積訪問1000施設を越え、会員とその家庭同伴犬とともに、京滋随一の実績を重ねています。

 (NPO法人アンビシャス副理事長 及川まり子)