ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

ユニバーサルデザイン
社会環境整備の概念に



 高齢化社会の到来とともにユニバーサルデザインへのニーズがますます高まっています。ユニバーサルデザインの考え方は、人々の価値観の多様化や社会の変化に応じて、より多くの人が利用しやすいように配慮されたモノやサービスを提供するということです。


車いすの人も利用できる水飲み場(京都市役所前)
 平成16年の参議院本会議において、ユニバーサル社会の形成促進に関する決議がなされました。そこでは、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れた総合的な社会環境の整備が謳(うた)われており、ユニバーサルデザインは社会環境づくりの概念としても使われています。

 車いす利用者や高齢者の移動の安全のために、道路の段差解消が進んでいます。公共交通機関においては、交通ターミナルにおけるエレベーターやエスカレーターの設置、ノンステップバスの運行も増えました。標識サインの大型化やカラー化により、たとえばトイレの位置のわかりやすさも向上しました。

 ベジタリアンのためにメニューに工夫をしたレストランも増えています。彼らの食事に対する不安が解消されます。

 京都市役所前の広場には高さの異なる、大人も子供も車いすの方も利用出来る水飲み場があります。これは多様性への配慮の一例です。しかも、安全でおいしい水を誰でも飲めることは、モノとサービスのユニバーサルデザインを実現していると言えます。

 一方、整備が遅れている場面もあります。情報のユニバーサルデザインについて一例を紹介します。外国からの旅行者の苦情の一つに、日本の観光地に無料のWiFiスポットが少ないことが指摘されています。彼らは地図によるナビゲートやメール通信にWiFiを使いますので、快適な移動にはWiFiが欠かせないのです。

 通信のユニバーサルデザインの問題もあります。われわれが外国に行った場合、町中にあるATMで簡単に現金を引き出せますが、日本では外国で発行されたクレジットカードで引き出せないATMがまだまだ多いです。国際回線と接続されていないためです。これも外国からの観光客の不満の一つです。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックには、ユニバーサルデザインの考えを取り入れて、競技場など諸施設の整備がなされるでしょう。受け入れにはおもてなしの心が全面に出されるでしょう。これはまさに心のユニバーサルなつながりをデザインするための典型と言えます。心のユニバーサルデザインは今後大きな力となり、幸せなユニバーサル社会の実現を早めます。

(京都工芸繊維大学副学長 森本一成)