7月に埼玉県で盲導犬が刺される事件があり、それを機に盲導犬への関心が広がりました。一方で、誤解も生じました。「盲導犬は何をされても声を上げないように訓練されている」「寿命が短い」「人間の犠牲になっている」といったようなことです。
でも、盲導犬の生涯を見てみれば、それが誤解であることがよく分かると思います。盲導犬は、その素質をもつ親犬から生まれた子犬を盲導犬候補として育てます。温厚で、順応性が高く、盲導犬の作業が楽しめるといった性格です。
まず、生後2カ月頃から1歳まで、パピーウォーカーと呼ばれるボランティアの家庭で愛情をもって育てられます。1歳になり、訓練センターに戻ってきた犬たちは2歳頃まで訓練士による訓練を受けます。
訓練は一緒に歩く人に注意を向け、指示を理解する「基本訓練」と、ハーネス(胴輪)をつけて安全な誘導をする「誘導訓練」です。「誘導訓練」では盲導犬の基本的な三つの仕事である「段差で止まる」「障害物を避ける」「道路の左側を歩き、曲がり角で止まる」よう訓練します。
訓練では、犬が指示した通りにできれば、グッド、グッドと言って褒めます。繰り返し褒めることにより犬は人からの指示を喜んで聞くようになります。ですから、犬はシッポを振って自分からハーネスに首を入れてきます。犬にとってハーネスをつけて盲導犬の仕事をすることは楽しいということなのです。
視覚障害者もこの候補犬と一緒に訓練センターで4週間の「共同訓練」という合宿を行います。この訓練では、犬への指示の仕方、犬との歩行技術、食事、排便、ブラッシングなどや健康管理についても学びます。しかし、生まれた子犬が盲導犬になるのは約3割。盲導犬の仕事に向いていない、あるいは健康状態に問題がある犬は盲導犬としないからです。そのような犬たちはペット犬として一般の家庭で飼ってもらいます。
盲導犬は約10歳が引退の時期です。その後はリタイア犬ボランティアの家庭で大切にお世話をしてもらいます。
2006年に発表された調査結果によれば、盲導犬のラブラドルの平均寿命は約13歳で、ペット犬より長いことがわかりました。これは盲導犬が生涯に渡って健康管理が行き届いているからであると言われています。
京滋地区では今年の3月末現在、34人の視覚障害者のもとで盲導犬が活躍しています。
(関西盲導犬協会・藤本喜久男)