ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

自助具
個人に合わせて製作



 ユニバーサルデザインとは、老若男女といった差異、障害の有無、文化・言語・国籍の違いを問わずにできるだけ多くの人が利用しやすくデザインされた情報・製品・施設を指します。


片手用爪切り器
 しかし、多くの人にとって使いやすいデザインであっても、特に高齢者や身体の不自由な方にとっては、使いにくい場合があります。そのような時には食事、入浴、家事などの日常生活動作を自力で行えるように工夫して作られた道具である「自助具」(=「自分自身を助ける道具」)が役立ちます。「できるだけ多くの人が利用しやすいこと」を前提とするユニバーサルデザインに対し、自助具は「身体が不自由な本人が利用しやすいこと」を前提としたもので、あくまでも、「利用する個人に合ったデザイン」であることが求められます。


太柄スプーン
 選ぶ際は、利用者の身体状態や使用環境をはじめ、習慣や癖など生活全般を考慮の上、「出来ること」と「出来ないこと」を見極め、どうすれば出来るか」を考えます。例えば、スプーンで食事をする際、指が曲げられない場合や握力がない場合は、「カフ」を利用して手のひらにスプーンを固定し、指が曲げにくい・握力が弱い場合は、曲げられる角度や保持できる力に合わせて「太柄スプーン」を利用します。

 入手方法は、介護用品店や福祉用具販売店、大型の雑貨店などで自分にあった市販品を購入するのが簡単ですが、利用者に合うものがない場合は加工したり、一から自助具を製作してもらえる機関に相談します。

 「自助具」を多くの方に知っていただくために、京都市長寿すこやかセンターでは、ひと・まち交流館1階の常設展示をはじめ、出張講座、出張展示などの普及、啓発活動を行っています。併せて情報提供や利用者に合わせた製作相談も行っています。

 センターで依頼を受けた自助具は、作業療法士の助言をもとに自助具製作ボランティアグループが製作しています。これまでも「片手用爪切り器」や「片手用シャンプー」「太柄スプーン」など多種多様なものを個人に合わせて製作してきました。

 自助具を利用することで、人に頼んでいたことや諦めていたことが自分自身で出来るようになり、生活しやすくなり、行動範囲も広がります。それが自信につながり、気持ちも明るくなって、積極的、前向きな姿勢をもたらします。自助具の一番の意義はここにあります。

(京都市長寿すこやかセンター)