ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

オレンジリボン
「私たちの問題」関心を



 オレンジリボン。これは「子ども虐待のない社会の実現」を目指す市民運動のシンボルマークです。オレンジ色は子どもたちの明るい未来を表しています。近頃では、町の公共施設などの啓発ポスターや、胸にオレンジのバッジをつけた人の姿を目にすることがありますが、その認知度は決して高いとは言えません。平成12年に児童虐待防止法が施行された事を期に児童虐待防止全国ネットワークが設立されました。その活動はオレンジリボンの普及を通じて、児童虐待への関心を社会に広げようとするものです。



オレンジリボンのマーク
 近年、虐待によって子どもたちが命を落とす事件が後を絶ちません。児童虐待の相談件数は毎年増加の一途をたどっています。全国の児童相談所が平成25年に対応した児童虐待の相談件数は(速報値)は7万3765件、前年度より7064件増えています。統計を取り始めた平成2年度から、23年連続で過去最多を更新し続けているのです。

 私の勤務する児童養護施設では、2歳から18歳までの子どもたちが親の離婚や病気、経済的な理由などで家庭を離れて生活していますが、虐待を受けて親子分離を余儀なくされた子どもたちもいて、深刻な問題となっています。虐待を受けた子どもたちの中にはその影響から自己肯定感を持てずに苦しんでいる子もいます。

 では、虐待をしてしまう親は、普通の親とかけ離れた身勝手で非情な存在なのでしょうか。決して虐待する親を容認するつもりはありませんが、そうばかりではないように思うのです。

 施設では健康管理のために母子手帳をお預かりするのですが、虐待を理由にやってきた子どもの母子手帳にも、かわいいカバーがつけられていたり、おなかにいるときのエコー写真までが大切に残してあったり、生まれたてのわが子の写真と愛情いっぱいのメッセージや成長の様子が途中まで細かく記してあるものもあります。難産で大変な思いをされただとか、未熟児でとても心配をされたこととか、職員が知りえなかった親子の時間がそこに記されています。それは、わが子をいとおしいと思う親の姿です。どこかで何かの原因でつまずきが生じるのだと思います。そういう意味で虐待はどこでも誰にでも起こる問題だと受け止めることが必要でしょう。

 オレンジリボン運動の目指す「児童虐待のない社会」は、私たちの問題として児童虐待を受け止めることから始まるものだと思うのです。

(児童養護施設舞鶴学園 児童指導員・桑原朋子)