ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

介護報酬改定の影響
入所制限より厳しく



 介護報酬改定が発表された。介護報酬の改定とは、2015年度から3年間の介護施設・事業所が受け取る報酬(介護サービスの値段)の決定である。今回は、2.27%の大幅引き下げとなった。改訂では、中重度の要介護者や認知症高齢者への対応に「加算」で評価し、サービス別の「基本報酬」は大幅減額となった。加算を取得するため、事業所などは、介護人材の確保と資質向上やサービスの質の向上により一層努力する必要がある。利用者は、介護報酬が下がれば、原則1割を負担する利用料金も減額とはなるが、減額だけで済まないさまざまな影響が考えられる。(表参照)


 今回の改訂の基本的な考え方は、25年に向けて誰もが住み慣れた地域で、生活を継続し、在宅医療と介護などを一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の体制構築を目指すことだ。この理念通りに進めばバラ色であるが、厳しい財政状況の下、具体的にどんな体制が構築されるのかは楽観視できないようだ。例えば、施設では、「施設から在宅へ」の方針の下、今年4月より入所対象者を原則「要介護3以上」となり、入所制限がより厳しくなる。また、老人保健施設では、「在宅復帰」を強化して退所を迫り、在宅に戻される危険性もある。

 一方、受け入れる在宅では、中重度の要介護者や認知症高齢者を地域で支える「24時間365日の介護サービスの確保」として定期巡回など新サービスが期待されているが、職員確保や経営見通しなど課題は山積しており、現時点では、在宅での受け皿は十分に整備が進んではいない。また、要支援の軽度者に関しては、2017年4月を目途に要支援者の「訪問介護」「通所介護」が介護保険からはずされて市町村事業となる。全て市町村の財源と資源で運営されるが、準備は遅れており、サービスの質の低下も懸念されている。

 今回の改訂では、軽度者が関係するサービス報酬が大幅に減額された。介護施設・事業所は、報酬減の影響を抑えるため、敢えて中重度要介護者や認知症高齢者を重点的に選別する可能性があり、結果的に軽度者が介護保険サービスから閉め出され重度化を招く可能性もある。必要な人に必要な支援が提供される介護保険制度の質量の充実は今後より一層求められている。

 25年まであと10年。地域で要介護者らが安心して生活する仕組み作りは自分たちの問題として考える必要性を、今回の介護報酬改定は私たちに投げかけているのです。

 (株式会社京都福祉ネット代表取締役 今井昭二=社会福祉士)