ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。


見せて伝える工夫の例

発達障害
強み生かし弱み補う



 発達障害は、簡単に言うと「脳の働き方に生まれつきの偏りがあること」と言えます。得意なことと苦手なことに差があるため、一般の人が簡単にできることが難しく、さまざまな苦労をすることがあります。2005年に施行された発達障害者支援法では、「自閉症、アスペルガー症候群などの広汎性発達障害、学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの脳機能の障害で、通常低年齢で発現するもの」と定義されています。

 自閉症、アスペルガー症候群などの広汎性発達障害(自閉症スペクトラムと言われることもあります)は、対人社会性、コミュニケーション、想像力の3つの領域の特性があることにより診断されます。ADHDは、不注意や多動・衝動性の高さが特徴です。LDは、「読む」「書く」「計算する」などの学習能力に特異的な落ち込みがあることが特徴です。ただし、特性のあらわれ方には個人差があり、かなり幅の広い障害です。また、いくつかの発達障害をあわせ持つ方も少なからずおられます。

 発達障害の人は、学校などでの集団生活、日常生活、学習、対人関係、仕事などさまざまな場面で困難を抱えることがありますが、発達障害の最大の困難は障害がわかりにくいということです。見た目には普通に見えるため、「わがまま」「サボっている」などと捉えられてしまい、無理なことを強いられたり、叱責(しっせき)されたりすることがよくあります。そのような中で、失敗体験を重ね、自信や人への信頼感を失くしてしまい、大きな不安を抱えて生活されている方は少なくありません。


 発達障害はなくなったり治癒したりするものではありませんが、周囲の人が障害特性を理解することで、その人の生きやすさは大きく変わります。また、二次的に生じる心理的問題を防ぐことにもなります。

 特性を理解する上で大切なのは、その人のできないこと(弱み)だけではなく、できることや強みに着目することです。

 その上で、強みを生かして弱みを補うことが役立ちます。例えば、口で言うよりも目に見えるようにして伝える、見通しをはっきりさせる、抽象的な表現を避け具体的に伝えるなどです。

 4月2日〜8日は発達障害啓発週間です。一人でも多くの方が発達障害のことを知っていただき、発達障害の方が生きやすい社会になることを望みます。

(京都市発達障害者支援センターかがやきセンター長・村松陽子)