ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

子どもの貧困対策法

自治体格差の解消 急務



 2009年、初めて公表された日本の相対的貧困率が驚くべき高さであったことをきっかけに、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が、13年に成立した。法律の目的は子どもたちが生まれ育った環境によって左右されることがないように、子どもの育成環境の整備と教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策の基本理念を定めること、国等の責務を明らかにし、総合的に推進することである。


 基本理念として、国には子どもの貧困対策に関する大綱の策定を義務化し、都道府県には子どもの貧困対策計画の努力義務を課している。

 法律が制定されて3年が過ぎ成果と課題が見えてきている。大きな成果は子どもの貧困課題を国民が意識して、学習支援、食や居場所などの生活支援の場が民間を中心に増えてきた。また地域の人権研修などで「子どもの貧困」をテーマにしたものが増え、新聞やテレビなどマスコミでも「子どもの貧困」を扱うことが増えてきた。

 一方で課題も多く見えてきた。特に行政では従来の子どもの支援と違って総合的に推進するということで、各課を超えた連携が問われることとなった。福祉と教育をはじめ縦割り行政の中で、いまだにどこが子どもの貧困対策の主担当課となるかでもめている都道府県や市町村も決して少なくはない。子どもの貧困対策のキーマンとしているスクールソーシャルワーカーの雇用や活用状況も自治体間の格差が大きい。また基礎データとなる子どもの貧困の実態調査一つでも質の高い調査をしている自治体とお粗末な調査内容の自治体、そもそも調査をする気がない自治体とその差は大きく開いている。子どもの貧困対策として現在、三層構造になっている(図)ことから、階層間の壁も厚く連携がうまくいっているとは言えず各階層ごとにバラバラに動いている状況である。

 子どもの貧困対策は即効性のあるものではなく成果をすぐに数値化できない。しかし子どもの貧困を放置することは確実に将来の国や自治体の力を奪うことになっていく。この対策の自治体格差を埋めることが急がれる。(社会福祉士 幸重忠孝)

子どもの相対的貧困率
平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合を示す。1990年代半ば頃からおおむね上昇傾向にあり、2012年には16・3%となっており、子ども6人に1人が相対的貧困状態にある。