ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

高次脳機能障害

不得意補い生活力向上



 交通事故や脳の病気の後に、こんな症状がありませんか。  物の置き場所を忘れる、同じことを何度も聞く、言葉がうまく出てこない、予定外のことがあるとどう対処していいかわからない、ささいなことでかっとなるなど、脳が傷ついた後に出てくるこういった症状のことを高次脳機能障害といいます。


 以前できていたことが前ほどはうまくできなくなり、場合によっては人が変わってしまったようにも見えるため、ご家族や職場など周りの人も、対応に悩み、戸惑われます。自分の病状についての理解が低下している場合には、悩んでいるのは周りだけ、という場合もあります。

 脳が傷つくと、傷ついた場所に応じてさまざまな後遺症が残り、得意なことと不得意なことの差が激しくなります。けれど、不得意なことに対しては工夫や環境調整を取り入れ、得意な、つまり保たれている機能をうまく生かすことで、生活を広げていくことが可能になります。

 京都市では、平成27年に高次脳機能障害者支援センターを開設しました。専門スタッフが、医療や福祉の関係機関と連携を図り、日常生活や社会生活上のお困りごとについての相談に応じています。また、入門講座などの研修会やご家族、ご本人の交流会などを定期開催しています。

 さらに、京都市地域リハビリテーション推進センター内に高次脳機能障害に特化した訓練施設を設置しており、肢体にも障害のある方に対する機能訓練や生活力の向上、代償手段の獲得などを目的としたプログラムを実施しています。

 当支援センターに相談があったAさん(40代男性)は20年前のバイク事故で5カ月間入院しました。退院後は以前のようには仕事ができず、転職を重ね、この数年は、自信をなくし家にこもる生活でした。専門医の診察で、脳の傷により記憶障害があることがわかりました。現在は、記憶をメモで補う習慣をつけ、就労を目指して訓練をされています。「仕事ができない自分に腹が立つし、周りからは怠けていると思われつらかったが、がんばりたい」と話されています。

 脳の傷は外からはわからないため、高次脳機能障害は、よく「見えない障害」といわれます。

 一人で悩まないで、まずはご相談ください。

 TEL 075(823)1658、FAX075(842)1541。
 月〜金曜午前8時30分〜午後4時
(京都市高次脳機能障害者支援センター)