京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
|
●ふくしナウ
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。 音楽療法記憶を掘り起こす
「いつもお世話になります」
「優しくしてくださるので安心です、またいらしてくださいね」 これが娘のA子さんに話しかける母親のことばです。A子さんの母親は2年ほど前から記憶があやしくなり最近は全く分からなくなってしまったため今は同居だそうです。
その後のA子さんの報告です。 「母の傍らで歌ってみました。<浜辺の歌><月の沙漠>‥私の覚えている歌を次々歌いましたが反応はありません。ところがある日<リンゴの歌>を歌っているときに、突然母が『A子のほっぺ、リンゴのようね』と言い、一緒に歌い始めたのです。歌い終わって私が母の顔を見ると『A子、来てくれたのね、みんな元気にしてる?』と、同居していることは分かっていないようですが、私が娘だということをしっかり認識してくれたのです。そういえば子供の頃リンゴの歌を歌っていると、母はよく私に『A子のほっぺ、リンゴのようね』と言っていたのを思い出しました。 <リンゴの歌>は母にとって何か特別なものなのだと感じた私は、それからはこの歌を母との交流に使うことにしました。母はこの歌を聴くと私を認識するのです。そして同時にいくつかの事を思い出すようです」 これは回想法としての音楽療法の良い例です。脳の深層に埋もれていた記憶が歌に同調して掘り起こされ、現実を認識していくのです。 音楽療法は心身障害者、高齢者そして一般全ての人達を対象に、それぞれに適した内容で展開されます。実施場所は病院、特別支援学校、老人ホーム、デイケア施設、集会所などが大半ですが、最近では自宅訪問での音楽療法も増えてきました。 当センーでは個人宅を含め病院や施設などへの音楽療法士派遣も行っており、年々増加する高齢者のケア活動の一環として音楽療法士の育成は重点課題だと考えています。 また音楽レクリエーションを中心に展開する<福祉音楽パートナー>短期養成コースも開設していますが、このコースは定年後の方たちがチャレンジできる音楽療法への入り口にもなっています。 音楽療法に関することは、ご遠慮なく音楽療法センターまでお問い合わせください。 рO75(211)4556 (京都音楽院京都国際音楽療法センター院長 山村和美)
▲TOP
|