ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

言語聴覚士

専門的に生活サポート



 言語聴覚士という職業をご存じでしょうか。私たちは何の疑いもなく、話すこと、聞くこと、食べることをしていますが、病気や交通事故で、ある日突然これらのことが困難になることがあります。また、生まれつき、これらのことが不自由な方もいます。そのため、コミュニケーションに支障をきたしたり、食事が十分にとれなかったりして、生活の質が低下してしまい、ご本人の望む生活ができなくなってしまいます。このような問題に専門的なサービスを提供し、当事者が自分らしい生活を確立したり、取り戻したりすることをサポートするのが言語聴覚士の仕事です。


失語症の方に呼称訓練をする言語聴覚士
 話すことや聞くことの問題には、ことばの発達の遅れ、聴覚障害、脳卒中後の言語全般に問題を示す失語症、声や発音の障害などがあり、食べることの問題には摂食・嚥下(えんげ)障害などがあり、小児から高齢者まで幅広い年齢層に現れます。言語聴覚士はこのような問題の本質や発現メカニズムを明らかにするために、検査・評価を実施し、必要に応じて訓練、指導、助言、その他のサポートを行います。これらの活動は言語聴覚士が単独で行うことは少なく、医療現場では医師・歯科医師・看護師・理学療法士・作業療法士、栄養士など、保健・福祉施設ではケースワーカー・介護福祉士・介護支援専門員など、教育現場では教師、心理専門職などと連携し、チームとして取り組みます。

 言語聴覚士は国家資格ですので、言語聴覚士になるには養成教育機関で受験資格を習得してから国家試験に合格し、厚生労働大臣から免許を受けなければなりません。養成教育には文部科学大臣が指定する学校(3〜4年制の大学・短大)または都道府県知事が指定する言語聴覚士養成所(3〜4年制の専修学校)と指定された大学・大学院の専攻科または専修学校(2年制)があります。

 1999年に第1回国家試験が実施されてから毎年1500人程度が言語聴覚士となり、現在の有資格者数(2016年3月末)は2万7274人となっています。働いている領域は医療機関、保健・福祉機関、教育機関などと多岐にわたっていますが、医療分野(各種病院やリハビリセンターなど)での割合が約70%と一番高く、次いで保健・福祉分野(介護老人保健施設、デイサービス・ケア施設、訪問看護施設など)が約15%です。現在、日本は高齢社会に入っているので、今後は保健・福祉分野からの需要がさらに高まっていくことが予想されます。(京都光華女子大医療福祉学科言語聴覚専攻教授・瀧澤透)