ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

アルコール依存症

社会問題生じるリスク



 お酒に酔うのはその中に含まれるアルコールという薬物の作用です。アルコールは身体にさまざまな作用を及ぼしますが、「酔い」は医学的にみると脳の機能低下です。アルコールは最も身近な脳に作用する薬物であり、この作用の一つに「依存性」があります。


 純アルコール量で1日60グラム(日本酒なら約3合、ビールなら約1・5リットル)以上の飲酒を「多量飲酒」と定義します。多量の飲酒は、肝臓や膵臓(すいぞう)、心臓などの病気を引き起こし、アルコール依存症にもつながります。アルコール依存症の特徴は「飲酒コントロール障害」です。飲み始めると止められない、健診などで問題を指摘され一時止めてもまた毎日のように飲んでしまうという場合は注意が必要です。平成25年の厚生労働省研究班は、わが国の多量飲酒者を約980万人、アルコール依存症とその予備軍300万人近く、依存症の疑いは100万人以上と推計しています。その約9割が男性ですが、依存症治療に携わる医師から、女性患者の増加が指摘されています。女性の飲酒習慣が広まっていること以外に、体格やホルモンの差などから、女性はアルコールの影響を受けやすいとする研究もあります。習慣的な飲酒開始から依存症になるまで、男性では約20〜30年ですが、女性は半分程度の期間と言われています。妊娠中の飲酒が胎児に影響を与えるなど、女性の飲酒習慣は男性以上に注意が必要です。

 このような問題を、皆さんはどの程度ご存じでしょうか。お酒は生活に潤いを与える一方、不適切な飲酒は健康を害し、その家族への影響や飲酒運転などの社会問題を生じるリスクもあります。平成26年6月、アルコール健康障害対策基本法が施行されました。この法律は、国民全体への啓発、アルコール健康障害の発生や進行、再発予防、アルコール健康障害がある人やその家族の支援、国民の健康の維持向上などを目的としています。

 依存症もアルコール健康障害の一つです。保健所や精神保健福祉センターなどでは、アルコール依存症に関する相談を受け付けています。ご家族だけの相談も可能です。依存症は、専門的な治療を受け、断酒会などの自助グループに参加することで回復の道があります。まずはご相談ください。

(京都市こころの健康増進センター)