ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

子ども食堂

食卓囲みつながる地域



 今、滋賀県内には、70カ所を超える子ども食堂が開設されています。「遊べる学べる淡海子ども食堂」と名付けたこの活動は、子どもを真ん中においた地域づくりの大事なプログラムです。県内の民間福祉関係者が「一人の不幸もみのがさない」という思いで設立した「滋賀の縁創造実践センター」が推進の事務局となって、県行政や県内社会福祉協議会、NPO、そして何よりも志を同じくする多くの県民の方々とともにつくってきたものです。


食後のおやつを食べながら談笑するのびっこ子ども食堂『いしでら』(彦根市)
 運営主体は学区・地区社協、まちづくり協議会、自治会、地域のボランティアグループ、そして老人ホームや障害者施設、保育園と多彩ですが、どの子ども食堂も、地域の子どもを愛情たっぷりの大人があったかいごはんで迎えてくれる「地域食堂」です。家庭の事情で親になかなか甘えられない子どもも、友達関係がうまくつくれない子どもも、そして子どもがもつ癒やしの力に引き寄せられた地域の方たちも、ごはんの用意をしながら、ごはんをいただきながら、将棋やボールで遊びながら、まじりあい、元気をもらい、人と人がつながってくる。子ども食堂のもつ場の力は、「このまちはコミュニティを感じるなぁ」という人を増やしていっていると感じます。

 県内の子ども食堂が大切にしているのは▽イベントではなく日常の場となるように月に1回のペースでも長く続けていくこと▽「ボランティアがこわい顔してたら子どもが近づいてくれへんよ」って冗談いいながら、活動者自身が楽しく、仲良く活動すること▽食堂の場を通じて子どもたちがさまざまな力をつけていけるよう応援することです。

 地域におられる高齢者の方たちが子どもの笑顔のために持ち味生かして世話を焼いてくださり、子育て中の親御さんもたまには一緒に食べにいきたいなと思い、働き盛りの世代の方は趣味の農業でつくった野菜を届けてくださる。企業やお店の方たちが地元の食堂を応援してくださる。子ども食堂が人びとのつながりの拠点として県内のどのまちにも当たり前にあり、そこではどの子もどの人も「あったかいごはん」でつながる大事なメンバー、こういう地域社会を私たちは次の世代につないでいきたいと思います。小さな一歩、でも楽しい一歩、気づいた人同士が手をつなぎ動き出しましょう。

(滋賀県社会福祉協議会次長・滋賀の縁創造実践センター所長 谷口郁美)