ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

高齢化するひきこもり

相談と支援 連携必要




 平成27年の内閣府調査によると、「ひきこもり」の状態にある人は推計54万人、ひきこもり経験者は推計288万人となっており、調査対象となった15歳〜39歳の人口の約10%が、現在ひきこもり状態にあるか、あるいはひきこもりの経験があるということになります。

 ひきこもりの経験者が、ひきこもりを脱するまでに要した期間は、約4割が1年以内、7割近くが3年以内となっている一方で、約2割が5年以上を要しています。ただし、これは39歳以下を対象とした調査で、長期化・高齢化したひきこもりに関しては十分とはいえません。

 同じ平成27年には、「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」による調査も行われています。こちらは、民間団体の調査になりますが、ひきこもりの持続期間は平均で10年9カ月、ひきこもりが始まった年齢は19・4歳、ひきこもりの方の現在の年齢は32・7歳、家族の年齢は62・8歳となっています。

 このように、ひきこもりは一定の割合で回復するものですが、一方で長期化という問題もあります。家族や本人がなかなか相談に踏み切れない場合、特にひきこもりが長期間になりがちです。本人が50歳、両親が80歳というような状況になると、両親の介護や亡くなった後の生活についても、具体的に考えなければならなくなり、問題は大変複雑になります。

 このように高齢の家族がひきこもっている子どもと同居しているというような事例では、例えば両親の支援に関わる地域包括支援センターが、まず初めにその状況に気づくというケースもあります。

 ひきこもりの相談窓口として「ひきこもり地域支援センター」が、各都道府県・政令指定都市に設置されていますが、ここでは個別の相談や支援だけではなく、地域における関係機関とのネットワークの構築や、ひきこもり対策にとって必要な情報を広く提供するといった地域におけるひきこもり支援の拠点としての役割も担っています。

 ひきこもっておられる方やそのご家族が、できるだけ早い時期から相談できるようにするためには、このような行政等の相談の充実のみならず、それぞれの人が安心できる居場所や活動の場を準備し、必要な支援につながるようにサポートすることが重要です。そのためには、さまざまな支援機関等の活動や相互間の連携が必要ですし、さらには地域社会の理解、偏見の除去が不可欠です。

(京都市こころの健康増進センター)