ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

精神保健福祉士

その人らしい生活 支援




 精神保健福祉士は、精神保健福祉領域のソーシャルワーカーの国家資格で、2018年2月末現在、全国に7万8千人の登録者がいます。1997年に精神保健福祉士法が成立するまでは精神科ソーシャルワーカー(PSW)という呼称で、50年代から精神科医療機関に、続いて保健所などに配置されてきました。

 精神保健福祉士は、社会福祉学を基盤とした専門職で、精神疾患や精神障がいのある方の生活上の課題や社会的な課題などさまざまな相談に応じ、一緒に考え、課題解決をめざすことや、社会参加に向けての支援を行うなど、その人らしい生活スタイルの獲得を目標として支援しています。必要に応じて関係機関や関係職種とも連携し、チームで支援することも多くあります。

 日本では、精神障がい者に対して、精神科医療機関への入院を中心とする政策を長く進めてきたため、リハビリテーションや社会参加を支援する施策は立ち遅れた状況でした。そのため、精神科医療機関には、社会的入院と呼ばれる何十年もの長期間入院をしたまま退院が難しくなってしまった方が今なお多く存在します。近年になりようやく関係法と共に、地域で生活するための支援体制が整備されつつあり、精神保健福祉士も精神科医療機関や行政機関だけでなく、地域生活を支援する相談支援事業所・就労支援事業所など医療・保健・福祉にまたがる幅広い分野で配置されるようになりました。

 例えば、生活訓練事業所では、家事など日常生活上の具体的な基本動作を一緒に行い、助言します。就労移行支援事業所では、就労前のトレーニングや実際の就職活動に関する助言や職場定着のための支援などを行います。

 また、教育現場の精神保健福祉などに関する相談援助を行うスクールソーシャルワーカーや、職場でのストレスやうつ病対策、職場復帰のための支援に企業内や外部支援機関にて精神保健福祉士が関わり、ハローワークでも精神障害者雇用のトータルサポーターとして、就職を希望する精神障がい者の相談を受けています。

 社会の閉塞(へいそく)感や格差増大を背景としてさまざまなメンタルヘルス課題を抱えた人が増え、われわれの活動領域や役割も多様化しつつありますが、個人としての尊厳を尊び、人と環境の関係を捉える視点を基本とした関わりを通じ、共生社会の実現をめざして、日々業務を遂行しています。

(京都精神保健福祉士協会)