京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●ふくしナウ
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。 自閉症スペクトラム周囲の理解で強み発揮
発達障害とは、「脳の働き方に生まれつきの偏りがあること」であり、程度はさまざまですが発達の経過に違いが生じたり、日常生活または社会生活において困り事が生じます。心の病気でもなければ、育て方や環境が原因でもなく、先天的かつ器質的な脳機能の違いです。 自閉症スペクトラムの人は、その違いがとくに対人社会性、コミュニケーション、想像力の3つの領域に認められます。 違いのあらわれ方には個人差が大きいですが、臨機応変な対人関係が苦手、自分の関心やペースが優先され、こだわりなどの独特の行動パターンや、感覚刺激に過敏といった症状が見られることが多く、集団生活や日常生活においてさまざまな困難を抱えることがあります。またその困難は周りからは見えにくく、「わがまま」「サボってる」などの誤解をうけることもあります。 一方でできないこと(弱み)ばかりがあるのではなく、目で見て理解することが得意、決められたことをきちんとできるなどの強みもあり、才能として発揮される場合もあります。
自閉症スペクトラムはなくなったり治ったりするものではなく、生涯その特性を持ち続けて発達、成長していきます。周囲がその特性を理解し、必要な配慮を提供することで、生きやすく、強みを発揮することができる一方、配慮のない環境や無理解が長く続けば、こだわりや感覚過敏などの症状が悪化したり、心身の不調や行動上の問題を増やしてしまいます。 このような二次的な問題を予防するために、視覚的に具体的に物事を伝える、あらかじめ見通しを伝える、ルールや常識を具体的に教える、独特の興味を認めて伸ばす、などの強みを生かして弱みを補う支援を早いうちから行うことが重要です。 障害者差別解消法が施行されて2年。自閉症スペクトラムの理解と配慮がさらに進み、社会的障壁の少ない生きやすい社会に近づくことを願ってやみません。 (児童精神科医 田中一史)
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