ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

聴導犬

人の耳になり音教える




聴導犬(中央)と一緒に訓練を受ける犬たち
 みなさんは、盲導犬には実際に街中で出合ったり、テレビなどで見た方も多いと思います。

 しかし、同じ補助犬でも介助犬や聴導犬を見た方はほとんどないと思います。

 なぜか?

 厚生労働省の最新の情報でも、盲導犬の実働数は全国で941頭であるのに対して、聴導犬はわずか74頭、京都で3頭、滋賀で3頭と圧倒的に少ないのです。

 さて、その聴導犬はどんな訓練をし、どのように聴覚に障害のある方の生活を豊かにしているのでしょうか。

 生まれたばかりの子犬は、生後まもない犬を預かってしつけをするパピーウオーカーさんのもとで数カ月間、食餌、排せつ、人との親和を高めるといった「しつけ」を受け、のち「基礎訓練」に入ります。

 「基礎訓練」では、「おすわり」「立て」「待て」など、人の指示を理解し、人からの指示通りに動けることを目指します。

 ふつう、指示は声を発して出します(声符)が、聴覚障害の方の指示の出し方として、手の動きをさまざまに工夫しています(視符)。

 滋賀県聴覚障害福祉協会は、今年2月、聴覚障害者の団体として日本で初めて聴導犬の育成に成功しましたが、視符の活用というのはいかにも当事者団体らしい特徴だと言えます。

 つぎに「聴導動作訓練」に取り組みます。犬が聴導犬になるための訓練です。

 キッチンタイマー、ベル、インターホン、目覚まし、ケータイの着信音、ドアノック音など、聴覚障害の方が日常生活上、犬に教えてほしいと思っている音はいくつもありますが、その中から特にユーザーとなる方が必要としている数音を選んで、犬に教え込みます。

 世の中には無数の音が飛び交っています、その中から必要な音を聞き分け、音が鳴っていることをまずユーザーに知らせ、その音源まで誘導するというのが基本の動作ですが、犬にとっては大きな負担になります。成功するたびに褒め、ご褒美を与え−を繰り返し、音を知らせることが犬の喜びになるまで高める必要があります。

 つづいて「合同訓練」で仕上げをします。ユーザーとの信頼関係を確かなものにし、電車、バス、病院、大型店舗などいわゆる公共の場で、他人に迷惑をかけないことを重点に訓練します。

 まだまだ活躍している聴導犬は少ないですが、みなさんの期待に応え、いい犬を輩出していきたいと考えています。(社会福祉法人滋賀県聴覚障害者福祉協会理事 中村正)