ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

手話通訳士

高い技術、倫理観備える




研修会で講師が話す内容を聴覚障害者に伝える手話通訳士
 テレビや講演会などで手話や手話通訳を見られた方はあると思います。国際障害者年を契機に聴覚障害者の社会参加が広がりました。聴覚障害者が社会参加する上で、なくてはならないのが手話通訳です。

 手話通訳の仕事を担う資格としては、手話通訳士と手話通訳者があります。手話通訳士は、厚生労働大臣が認定した社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)に合格して登録した人を言います。また、手話通訳者とは、都道府県の認定通訳者を言います。

 手話ができることと手話通訳ができることは違うのです。

 手話通訳は、コミュニケーションを保障し、聞こえない事により不利益が生じないようにすることが目的です。また、個人情報やプライバシーを知ることになるため、高い倫理観と公正な態度、幅広い知識および高い通訳技術が求められます。そのため、手話通訳士試験では、「障害者福祉の基礎知識」「聴覚障害者に関する基礎知識」「手話通訳のあり方」「国語」の学科試験と、聞き取り通訳と読み取り通訳の実技試験があります。受験資格は20歳以上となっています。

 手話通訳士試験は、1989年に第1回が実施され昨年4月現在で3608人(京都府107人、滋賀県42人)が登録しています。手話通訳士の資格が必要な通訳は政見放送ですが、そのほかに専門的な技術が求められるところでは手話通訳士が対応しています。

 この手話通訳士制度実現に向けて、全日本ろうあ連盟と全国手話通訳問題研究会は、85年に聴覚障害者の生活実態や不安定な手話通訳者の身分などをパンフレット「I LOVEコミュニケーション」にまとめ、120万人を超える国民に販売し、普及するという大運動を展開しました。パンフレットでは、最低4000人の手話通訳士が必要とありますが、30年経過した現在でも目標数に到達していません。

 全国手話通訳問題研究会では、5年に一度「雇用されている手話通訳者の実態調査」を行っています。2015年の調査では、平均年齢が52・1歳となり、手話通訳者の高齢化が進んでいます。未来を担う手話通訳士・者を増やすために、養成と身分保障の充実は急務と考えます。手話言語条例制定などにより、手話講習会などで学ぶ人たちは増えていくと思われます。手話通訳士・者をめざす人が一人でも多く増えてほしいと願っています。

(京都手話通訳問題研究会)