ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

児童養護施設

家族に近い環境、重視




児童養護施設舞鶴学園の庭でボール遊びをする子どもたち(舞鶴市泉源寺)=提供写真
 児童養護施設とは、児童福祉法(1947年)で定められた児童福祉施設のひとつです。おおむね幼児年齢から高校卒業時までを対象としています。事情があって家庭での養育が困難な子どもたちを受け入れ、生活の場を提供するとともに幼稚園、小学校、中学校、高校等にそれぞれ通いながら、子ども時代を過ごすところです。子どもたちの成長・発達を保障しながら、家庭復帰のお手伝いをしたり、各種学校や大学等への進学、あるいは就職など、自立に向けた個別的ケアも役割としています。ケースによっては社会生活が軌道に乗るまで関わることもあります。京都府内には13、滋賀県内には4施設あります。

 近年では、出来るだけ家庭に近い環境で生活を送ることが出来るように、施設や生活の単位を小さくしたり、衣食住の暮らしを通して自立への力を育めるように、生活環境への配慮に努めるなどの取り組みが進んでいます。多くの施設では、四季を通じての行事(ハイキングやキャンプ、クリスマス会等)、茶道や書道、そして音楽等を体験できる機会をもうけたり、学習塾やサッカー教室等に通うなど、地域交流も大切にしています。施設では、施設長をはじめ、保育士や児童指導員、栄養士や心理療法担当者、事務職員等の専門職が24時間365日、子どもたちの育ちを担っています。

 2016年に児童福祉法の改正があり、「児童が適切な養育を受ける権利を有する」や「家庭と同様の環境における養育の推進」等の理念が明確化されました。それを受けて従来の施設利用の比重を軽減する方向が示され、里親やファミリーホームの拡充に向けた施策を重点化するなど、国は大きく舵(かじ)を切りました。

 実は、17(平成29)年度の児童虐待相談対応件数(13万3778件)のうち、約3%余がその後、児童養護施設や他機関で養育されていることが報告されています。過日、18(平成30)年度の児童虐待相談対応件数が15万9850件(速報値)であると発表されました。前年度に比して19%余増加し過去最多となっています。

 近年、特に家庭養育の脆弱(ぜいじゃく)化が原因で幼い命の問題や生きづらさを抱えた子どもたちの姿が、度々報道されています。養育不全を重く体験した子どもたちには、自分を取り戻すための支援が必要です。将来を担う子どもたちが希望を繋(つな)いで安心して生きていける子ども文化の醸成が、社会には強く求められていますが、それは、私たち一人ひとりへのメッセージでもあると思うのです。

(社会福祉法人舞鶴学園 理事長桑原教修)