ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

ふくしナウ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

世界ダウン症の日

得意分野で輝く日々を




診療所で理学療法士らと積み木で遊ぶ子ども(京都市伏見区深草加賀屋敷町)=提供写真
 2012年、国際連合において、国際デーの一つとして3月21日が「世界ダウン症の日」と定められ、その時から毎年、日本・世界中でさまざまなイベントが行われ、ヒトがその人らしく、元気で安心して暮らせる取り組みや活動が広まっています。

 「ダウン症」は正式にはダウン症候群といい、18661年英国の医師J・L・H・ダウンによって初めて医学的に記載され、1959年になってフランスのレジョーヌによってこの症候群が染色体に起因することが報告されました。

 ヒトの体を構成している何兆もの細胞の中にある染色体は通常?23対、計46本ですが、この染色体の「21」番が通常より1本多い3本あり、3がギリシャ語で「トリ」ということから「21トリソミー」と名付けられました。

 専門的になりますが、最も多いのは「標準型」といわれる21トリソミーで、ダウン症候群全体の約95%にあたり、生殖細胞分裂期の不分離で生じます。また約4%が「転座型」で、21番染色体が他の部分に付着しています。あとの1%は「モザイク型」と呼ばれ、21番が2本の細胞と3本持つ細胞が同じ人の中で混ざり合っているタイプです。

 診断や医学的理解が進み、同時にダウン症のある子どもを守り、健康に育てる医療もスタートしました。

 約50%に合併する、先天性心疾患は生死に関わる難しい病気ですが、近年、先進的医療機関では手術成功率が95%という良好な成績が得られています。

 身体的特徴として、筋力が弱い、関節可動域が大きいなどがあり、姿勢運動発達に影響します。首のすわりやハイハイ、歩行などの粗大運動だけでなく、食物の摂取や咀嚼(そしゃく)などの食行動、発語・構音などにも機能障害を認め、訓練が必要になることもあります。

 出来るだけ多くの人をまきこんで、少し丁寧にまたゆったりと子育てしてほしいと思い、私は日々診療にあたっています。

 社会の多くの場面で、ダウン症があっても得意な分野で活躍される方々、またゆっくりと穏やかに過ごしておられる方々やご家族に会うと、障がいのある子どもとの歩みを旅に例えたE・P・キングスリーの素敵なエッセイ「オランダへ、ようこそ」が心に浮かびます。「イタリア行きを楽しみにしていたのに、知らぬ間に飛行計画変更されてオランダに着いてしまった、どういうこと?!」

 想定外の旅だけど、仲間との笑顔あふれる日々は宝物。「3月21日」笑顔がさらに輝く日となることを願います。

(京都市第二児童福祉センター診療所 小児科医 市川澄子)