ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
私は若年性認知症/藤田和子

学校の先生とのやりとり
家庭訪問で個別に対応


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母と同じ看護師を目指して看護専門学校を卒業した長女(左)と藤田さん(2008年、鳥取県民文化会館)

 若年性アルツハイマー病と診断された当時、同居していた家族は、夫と3人の娘と私の5人でした。長女は専門学校に通い、次女は社会人、三女は中学生でした。

 その当時は子育ての真っ最中で、夫は仕事に追われていました。私は、学校関係の役員をしたり、仕事や社会的活動に日々追われていました。思春期の子どもたちが抱える問題についても母親として関わっていく必要がありました。

 学校の先生とのやり取りをする場面でも、私がアルツハイマー病だということを知ってもらう必要を感じることもありました。しかしそれを告げても、私の病気を理解し、子どもたちとの関係をサポートしてくれるのだろうか? よく言われている「認知症の人は理解力がない」「言ってもわからないだろう」という偏見を、私に押しつけられるのではないか? 私には、先生たちが偏見なくサポートしてくださるという確信が持てませんでした。

 実際、三女が中二の時に関わった教師はこの病気のことをよく理解していなかったと思います。「こんなに話すことができて、しっかりしているのにお母さんは認知症だという…」。戸惑う気持ちを顔にあらわすだけの反応で終わりました。

 けれども、高校受験を控えた中三の時の担任教師は、私のやりにくさを理解しようと努力し、自分にできることは何かを考えてサポートしてくださいました。アルツハイマー病の私は、たくさんの人の中で交わされている会話を聞いていると、頭が混乱してしまいます。進学説明会などで何枚もの資料をいきなり見せられてもすっきりと理解できず、冷や汗が出てきました。そこで、担任教師は、娘に必要となることだけを時系列に紙に大きく書き出し、何が必要で何をすべきかを、家庭訪問で私に示してくださいました。さまざまな困難を抱え、個別に対応がいる保護者の中にはアルツハイマー病のような病気を抱える親もいるということも知ってほしいのです。

 子どもたちが認知症と診断された親をもったとき、その病気への理解を促し、必要とするサポートを一緒に考えてくれる教育者が必要です。子どもたちの不安や疑問に正しい知識を持ち答えられる大人や同級生が今の社会にどれだけいるのでしょうか。そういう面からの啓発も必要ではないかと思います。

 今は、次女は結婚し、孫もできました。長女は来月には結婚し家を出ます。相手のご両親には理解してもらっているのですが、社会の中では親が認知症だからという理由で破談になるケースもあるようです。また、親が病気だということを子どもには伝えられないというケースがあるようです。

 他の病気と同じように、認知症は誰もがなりうる病気です。今後は若い世代への理解を深め、今までの認知症に対するイメージを変え、子ども達と共にサポートする方法を考える必要があると思います。


ふじた・かずこ
1961年、鳥取市生まれ。看護学校卒業後、看護師として市内の総合病院に9年間勤務。認知症の義母の介護を9年間行った後、市内の個人病院に復職し8年間勤める。2007年6月、若年性アルツハイマー病と診断され、その後退職。10年11月、若年性認知症にとりくむ会「クローバー」を設立し代表に。11年11月から、鳥取市差別のない人権尊重の社会づくり協議会委員。