ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
六畳半の宇宙から

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

パソコンを操作する川北浩之さん
(2004年夏、綾部市内の自宅)

僕っていう変人
意に反する体、やっぱりかなん

川北 浩之


 僕は、長い文が苦手だ。どうこうあがいても、なかなかうまく書けない。子どものころから詩を書いてきたので、癖になってしまっている。だから詩も入れて書くのでよろしくお願いします。

 ということで、脳性まひについて書く。僕の場合は、アテトーゼ運動というもので、体が意に反する事をやってしまう。そういうおかしな体でも、生まれて50年。だからそういう日常を、人が言うほど、苦にした事はない。だって、僕にとってはもう当たり前の体だから!

 だけど、かなんもんは、かなん!。手が動かないので、ズボンをあげるのに一晩かかることもある。締め付けられるように手が痛い日もある。年をとるたび硬くなる感じで、それに伴い不安が襲いかかる。

 睡眠時間は、決まってないし、眠らずにいられる。というのは、緊張がきつかったり、将来の事を考えると、眠れなかったりするからだ。朝は、ヘルパーさんが10時に介護に来て、起こしてくれることもある。

 僕が詩を書いているパソコンには、障害者向けのソフトが組み込まれている。文字作成という機能を押すと、「あいうえおかきくけこ」という文字盤が出て来る。それが、カーソルみたいに、左から右に移動する。例えば「え」を入力したければ、あ行から「え」を選択しなければならない。カーソルは上下にも動く。アームにマウスがついていて、それをあごで、たたくように操作する。だから1つの文を書くのに2時間、まとまった文章なら何日もかかる。

 それでも、ワープロやタイプライターの時より楽になった。そのころは口に木の棒をくわえて使ったので、鼻炎もちの僕には地獄だったし、唾液が入り、1年で3度、修理に出していた。

 詩を書く以外には、基本的に「おたく」なので、AKBなどのアイドルや、WWE(アメリカのプロレス団体)のDVDを見たりしている。あと、巨人ファン。なぜって、僕の小さな時いた施設では、阪神ファンの職員が多かったからその反動で。

 酒も、エッチも、大好き。時には、アダルトビデオで詩を作る。ということで、いつでも何でも詩のネタにする。

 こう、書いてみて・・・やっぱり、僕は、変だ。



かわきた・ひろゆき
1962年、綾部市生まれ。
出生時から脳性まひで重度身体障害者。舞鶴共済整肢学園、向日が丘養護学校(長岡京市)、丹波養護学校高等部(南丹市)、身体障害者療護施設「友愛園」(福井県小浜市)で学んだ後帰郷。生活空間の六畳半の部屋から発信を続ける。詩集「Kt38・1℃」、「六畳半の宇宙」、川北さんの詩に友人が曲をつけたCD「虹のできた街のように」を刊行した。