ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
シンポ傍聴席  精神保健福祉ボランティア
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会場の中京区役所には約60人が集まった


同じ生活者の視点が大切
寄り添い、地域との橋渡し



 精神に障害のある人を同じ地域の生活者として支える精神保健福祉ボランティアについての講演会とシンポジウムが、このほど京都市内で開かれた。全国各地の取り組みの報告や長年にわたるボランティア活動で得られた経験が語られ、活動への関心を深めた。

 精神保健福祉ボランティアは、精神に障害のある人が利用する共同作業所や医療機関、デイケア、地域生活支援センターなどで、介助や話し相手、通院の付き添いなど多様な活動を行う。

 障害を理解しながら地域と障害のある人の懸け橋を目指しており、各地で精神保健福祉ボランティアになるための養成講座が開かれている。

 講演会とシンポジウムは、京都市精神保健福祉ボランティア協議会「風のリンケージ」(事務局・京都市こころの健康増進センター内)などが主催して開いた。

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「当事者に学ぶ姿勢が大切」と語る前田さん
 最初に、1984年に全国で初めて神奈川県で開かれた養成講座に参加して以来、20年以上にわたって活動を続ける神奈川県精神保健ボランティア協議会の前田絢子さんが「こころのふれあいってなぁに? 私たちにできること」と題して講演した。

 「養成講座で作業所に見学に行ったとき、障害のある人に「そばにいてくれるだけでいいよ」といわれ、それなら自分だってできるじゃないかと始めたのですが、だんだんその意味が分かってきました。

 何かをしてあげるということではないのです。不安なことなどを言葉に出してもいいんだなという、安心をしてもらう関係を作ることです。

 基本は彼らがこうしたい、ということを応援していこうということです。今は、当事者が自ら語り、行動していく時代だと思います。ボランティアは、彼らが自ら語り、行動できるためのサポーターです。

 精神の障害は見えにくいので、それを私は生活のしづらさ、生活障害としてとらえてきました。私たちと同じ生活者であるという視点を大切にして、日常的なかかわりをしながら寄り添うことが大切です。そしてどのように生活を築いていくかを考え、地域との橋渡しをしていく役割を担うのがボランティアだと思います」

 シンポジウムでは、神奈川県はじめ、京都市、愛知県、秋田県のボランティアが参加、活動や体験を話し合った。

 活動面では、ハイキングや旅行、バザーの開催、就労活動で一緒に事業所にいくなどの活動のほか、デイケアに来た人とボランティアが一緒に喫茶店を開き、作業所やグループホームなどを運営しているボランティア団体もある。携帯電話での自殺予防の夜間相談を行っているグループも。

 また、「なかなかコミュニケーションがとれないなど苦労したが、研修で学ぶことで乗り切った。自分自身の自己実現や自己形成の面で大きなものを得ている」、「やれることをやっていくということでいいのでは。自分がいかされているという喜びがある」などの体験が語られた。