ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
シンポ傍聴席  障害のある人の就労支援

企業や行政の連携が重要
違いは当たり前、健常者も学ぶことが多い



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基調講演するアクテック社長の芦田庄司さん
 シンポジウム「障害のある人の就労支援」(京都新聞社会福祉事業団主催)が2月5日、京都新聞文化ホールで開かれ、精神障害のある人らを雇用している事業所や、病院など支援機関の代表から報告があった。宇治市を中心に、ハローワークや保健所、医療機関、企業など13機関でチームを作り、障害者の就労支援に取り組む「山城障がい者就労サポートチーム調整会議(通称・はちどり)」が共催した。

 基調講演では「安心して働ける職場〜障害者雇用を継続するために〜」と題して、大阪府枚方市の家具団地でアルミケースを製造しているアクテックの芦田庄司社長が、20年間にわたる精神障害者雇用の取り組みについて語った。

 芦田さんは、不況で事業規模の縮小を迫られた時、何のために会社を経営しているのかを熟考し「従業員とは障害者も含めた地域住民であり、障害者から健常者が学ぶことが多い」という結論に至ったと述べた。

 さらに▽障害者であることをオープンにする▽訓練期間を置く▽ハンディを認めた上で就労したいという本人の強い意向を確認する▽会社のすべての仕事を体験してもらう―という方針を紹介。その上で、障害者と健常者は出来高に差があって当たり前で、皆が均一というのは公平ではないが、それぞれのレベルに合わせた目標は必要。健常者はあまり理解せず作業してけがをすることもあるが、障害者は理解するまで質問する。だからリーダーには時間がかかってもいいから、相手が納得できるまで回答するよう指導している。まじめで忠誠心のある人は大切にしたい、と話した。

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障害のある人を継続して雇用するにはどうすればいいかを話し合ったシンポジウム(2月5日、京都新聞文化ホール)
 実例報告では社会適応訓練事業として「はちどり」に参画する2企業で働く、障害のある人の事例が紹介された。飲食店で働く統合失調症の40代男性のケースは、店を運営するファンシステム代表取締役の小山和幸さんと府立洛南病院作業療法士の岩根達郎さんが紹介した。男性は意欲低下や疲れやすい症状があり、相談のうえ開店前の清掃という短時間業務から開始。社長、店長、支援センター、保健所担当者を交え定期的に打ち合わせをもった。今では勤務時間を増やしながら、さまざまな業務に取り組んでいるという。

 スーパーマーケット内で生花店を営んでいるシオン次長の林由美子さんと宇治おうばく病院精神科医師の沢井真樹さんは、対人恐怖などの症状があるアスペルガー症候群の30代男性を受け入れたケースを紹介。男性は、サカキの枝を束ねたり仏壇用の花束を作っており、2年間で相当の数をこなせるようになった。その日の業務を、ノートに書いて振り返りをしているが、今では気になることはその日のうちに話し合いができるし、同僚とのコミュニケーションも少しずつ図っているという。林さんは「初めは障害のある人とどう接すればいいか分からず、不安なこともあったが『はちどり』のメンバーに支えられた」と述べた。

 シンポジウムを通して、継続した雇用を支えるためには企業や行政、医療、福祉が連携しネットワークを構築する重要性が強調された。