ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
シンポ傍聴席  一人暮らし高齢者支援

地域の見守り 自治会が基本
あいさつが孤独死防ぐ



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「孤独死ゼロ作戦」について事例報告する千葉県・常盤平団地自治会長の中沢卓実さん
 シンポジウム「地域での見守り〜高齢者が一人でも安心して暮らせるために〜」(京都市主催)が3月17日、京都市下京区のキャンパスプラザで開かれた。千葉県松戸市の常盤平団地で「孤独死ゼロ作戦」を進めている同団地自治会長の中沢卓実さんが事例報告を行った。

 「孤独死ゼロ作戦」は、同団地で2001年春と翌年春に孤独死が続いたのが発端。団地自治会と地区社協が主体になり▽近隣住民からの連絡を呼びかける「孤独死110番」▽シンポジウムの開催▽早期発見や緊急時の対応のための新聞配達員や合い鍵業者との連携▽スムーズな支援を目指す個人情報登録システム「あんしん登録カード」―などの内容で行っている。07年春からは年中無休の「いきいきサロン」も開き、仲間づくりの輪を広げている。

 中沢さんによると▽あいさつをしない▽友達がいない▽地域の催しに参加しない▽ごみ出しや料理ができない―など「ないないづくし」の生活が孤独死する人の共通の傾向。全国で100万人以上の男性高齢者と300万人以上の女性高齢者が一人暮らしで、就職難などから多くの若者も一人暮らしを強いられていることから、孤独死予備軍は相当内在しているという。

 常盤平団地での取り組みの基本は人と人とのつながりを深めることで、地域の合い言葉として「あいさつは幸せづくりの第一歩 みんなで創(つく)る『向こう三軒両隣』 友は宝なり」を作り、あいさつとおすそ分けを奨励している。また「万一のことが合ったら頼むよ」と高齢者同士が家のカギを交換している事例も紹介された。

 中沢さんはこれら対策を企画、推進するための自治会や町内会の役割を強調し「自分たちの地域は自分たちで見守り合い支え合うのが原則。会長が一年交替では発展性が乏しい。自治会がしっかりしていないと問題をはらむことが多い」と述べ、取り組みが行政任せになってないか警鐘を鳴らした。

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高齢者が一人でも安心して暮らせる地域づくりについて話し合ったシンポジウム(3月17日・キャンパスプラザ)
 自治会役員の心得として情報提供の大切さを強調。具体的には会報やちらしの発行や地域行事の新聞社への取材依頼を勧めた。また地域の問題点をみんなで共有して話し合っていくうち、時間とともに無関心な人も前向きになる、と述べた。

 中沢さんは自治会活動について「人間は人のために尽くすようになっている。人のために尽くすとぼける暇も年をとる暇もない。やればやるほど成果が上がるのが地域起こしの喜び」と結んだ。

 同じく事例報告を行った西京区桂学区社会福祉協議会の荻野和子会長は、昼間独居の高齢者が比較的多い地域の特徴に触れ、健康すこやか教室、ふれあい喫茶、配食や布団丸洗いサービスによって孤立防止に取り組んでいる様子を紹介した。

 元殿さまキングスで解散後は骨髄バンク支援のためNPO法人「命のつどい」理事長を務める多田そうべいさんは基調講演で、「自分だけは大丈夫」という感覚を人間誰しも持っている。「大丈夫ですか」と声をかけると「大丈夫です」と返ってくるから「何か困ってることありませんか」という声のかけ方をしてほしい、と語った。