ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
シンポ傍聴席  若年性認知症の受け皿

できる作業で喜びの体験を
記憶は消えても感情は残る


 シンポジウム「今求められている若年性認知症の受け皿」が4月28日、宇治市の「ゆめりあうじ」で開かれ、先進的なケアに取り組む府外の団体と、地元団体の代表者が活動報告などを行った。

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コーディネーターを務めた野池雅人さん。左はパネラーで主催者の一人でもある吉田照美さん
 若年性認知症の人は全国推計で約4万人、京都府内にも数千人いるとみられる。男性に多く就業が困難になることが多いので経済面でも問題を抱える。またライフサイクルが違うので、デイサービスなど高齢者用の支援は適用しにくい。シンポジウムは就労面など時代に則した受け皿を考える狙いで、NPO法人認知症友の会=携帯電話080(1512)6160=が主催し、NPO法人きょうとNPOセンター事務局長の野池雅人さんがコーディネーターを務めた。

 「NPO法人認知症の人とみんなのサポートセンター」(大阪市東成区、報告者・杉原久仁子副代表)では「本人ボランティア」として平日の半日に週1回から3回センターへ通ってもらい、パソコン入力、発送、軽事務作業などできることをしてもらっている。その結果、自信を取り戻して飲食業の準備をしたり、就労支援移行事業所に通っている人もいる。またアート作品づくり、歩く会、絵本読み聞かせの会も行っている。

 若年性認知症の家族会「朱雀の会」(奈良市、報告者・大塚幸子代表)は、2カ月に1回交流会を行い、家族に気持ちを吐き出してもらうとともに「自分に合う話があれば持ち帰ってください」と勧めている。食べると気持ちも和やかになるので年1回、入浴も兼ねた食事会も開催する。「朱雀の会」が事務所を置いている若年性認知症サポートセンター「絆や」(同、報告者・菅昌生さん)は、当事者が働く場として草抜き、洗車、エアコンの除菌清掃を備えている。認知症になっても旅行やしたいことができる社会を目指すNPO法人認知症フレンドシップクラブに支部として加入し、一般への広報として、大阪でロックバンドの聴衆に認知症の話をしたりもする。

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若年性認知症の人の受け皿について語り合ったシンポジウム(4月28日、宇治市・ゆめりあうじ)
 「町田市つながりの開(かい)」(東京都、報告者・前田隆行代表)は、介護保険を利用している当事者でも、ボランティアの謝礼などのお金を受け取れる場合もあることを説明。活動報告としては認知症の当事者、家族、サポーター計約50人で市民祭りでよさこいを踊ったこと、紙芝居やバーベキューなどのイベントを行っていることを紹介した。

 NPO法人認知症友の会(宇治市、報告者・吉田照美常務理事)は、若年性認知症の人に荷物運びなど作業の手伝いをしてもらっている。認知症であっても「何もできない人」という扱いをせず、頼りにしています。やってもらってありがとう」と声をかける。すると記憶は残らなくても良い感情は残るので、次回も来てもらえる。責任を持ってやり遂げて喜んでもらうことが大切、と述べた。

 NPO法人エクスクラメーションスタイル(八幡市、報告者・板倉信太郎さん)は、障害者による陶器製品の製作や食品加工を行い、企業と提携して、市場で負けない商品づくりをキーワードにしている。若年性認知症の人についても、厚生労働省通知で障害福祉サービスや障害者雇用施策による支援が使えるようになり「私たちのこれまでのノウハウを活用できるのではないかと名乗りを挙げている」と述べた。