ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
自然との共生  障害者カヌーを楽しむ

【3】安全面への配慮

介助者講習重ね 挑戦をサポート(2019/04/16)


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ボランティア講習会でパドルのこぎ方の説明を受ける参加者(2008年8月、京都府京丹波町の艇庫前)=写真は本人提供

 「あっ京都から来ているやつがいる」

 京都で障害者カヌーを広めた2人が初めて顔を合わせた瞬間でした。始まりは1991年5月、奈良で行われたパラマウントチャレンジカヌー教室に車いすユーザーの2人が京都から参加したことでした。

 現地で同じ京都ナンバーの車があることから知り合った藤村真司さん(故人)と現在日本障害者カヌー協会会長を務める吉田義朗さん(66)は京都に戻り、奈良で体験した感動を「京都でも」と翌年1月に実行委員会を結成し、障害のある人もない人も一緒にカヌーを楽しむパラマウント・チャレンジ・カヌー京都(以下、京パラ)を始めることになったそうです。

 いざ始めると宣言したものの、参加者やボランティアは集まるのだろうかと不安が募ったそうです。しかし、定員30人に対して2倍60人余りの障害のある人から申し込みがあり、5月から8月まで4回開催し、延べ100人が参加しました。ボランティアも延べ500人近くが参加し、大成功を収めました。初参加の障害のある人も私と同様に「川面から見る両岸の岸壁の美しさ」「風をきって進む気持ちよさ」を体験したと思います。参加者の思いをつづった報告集「水に浮かんだ障害者」も作成されました。

 私が初めて体験した2000年夏には、2人は奈良に転居をしていたこともあり、まわりのみんなに乗せられてそれまで築き上げてきた活動を引き継ぐ形で、京パラ実行委員長を担うことになってしまいました。

 京パラには、肢体障害や聴覚障害、視覚障害、発達障害など、いろいろな障害のある人たちが毎年30人ほど参加しています。

 アウトドア、特にウオータースポーツは溺れたり、長く水に入っていることで低体温症になることもあります。京パラでは安全に開催できるように、大会の1カ月ほど前にボランティア講習会を開催しています。前半は座学で「介助マニュアル」(実行委員会作成)を使って、ボランティアとして世話をするだけではなく、障害のある人がカヌーを行う上で必要最低限のサポートをするにはどのような支援が必要なのか、また熱中症など体調に気をつける点など事故につながらないように注意することを学びます。その後、実技として河原に出て車いす介助やカヌーに乗り込む時の介助の手順などを実際に体験してもらいます。後半は水上でのレスキューについて、初心者の人にはパドルのこぎ方から説明をし、水上に出て川の流れのあるところないところの状況を実際に体験してもらいます。

 安全面への配慮を第一に心がけ、京パラの1日を楽しく過ごせるように心がけています。


パラマウント・チャレンジ・カヌー京都実行委員会
1992年1月設立。実行委員15人。「人と人とのつながり」を合言葉に障害の有無にかかわらず、多くの人にアウトドアの楽しさを知ってもらい、障害のある人の社会参加について考える場として活動。カヌー大会開催に向け4月から10月に実行委員会を月1回開き、ボランティア講習会やボランティア向けのカヌー大会も行う。
事務局は京都市南区吉祥院西定成町の市中部障害者地域生活支援センターらくなん内090(1070)6044=午後8時〜10時。

写真 えむら・ひろゆき
1952年生まれ、京都市出身。
京都府立嵯峨野高卒。3歳の時に小児まひにかかり身体障害者(下肢機能障害)になる。京都市中部障害者地域生活支援センターらくなん嘱託。パラマウント・チャレンジ・カヌー京都実行委員長。66歳。