ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
自然との共生  障害者カヌーを楽しむ

【6】障害あってもなくても

すべての人に魅力伝えたい(2019/07/23)


写真
大会は中止になったが、会場の京都府京丹波町の艇庫前でバレーボールを楽しむ参加者=写真は本人提供

 「今年は大丈夫ですね?」。14日に開催予定だった第31回パラマウント・チャレンジ・カヌーin京都(京パラ)を前に多くの参加予定者からこう聞かれました。豪雨のため一昨年、昨年と2年連続で中止していたからです。天候ばかりは決められないので「何とか開催できれば」と応えるのがやっとでした。前日の13日、会場の京都府京丹波町の由良川にはキャンプする仲間が続々と集まり、準備し、交流も深めて当日を迎えました。

 しかし…。早朝から和知ダムからの放流量がカヌー貸し出しの規定量を超え、全員、がくぜんとしました。当日参加の人たちに「カヌーには乗れない」と連絡を入れました。それでも、参加者はボチボチ集まり。最終的にはほとんどの人が集まってきてくれました。Tシャツを配り、カレーを食べて、バレーボールをしたり、久しぶりに会った友人と話し合ったり。

 そんな参加者の中に、梨紗ちゃんファミリーがいました。初参加は2006年。彼女は7歳で、お母さんと2歳年下の弟と3人でした。数年続けて参加し、人なつっこい彼女はスタッフの中でアイドル的な存在でした。弟さんも年々カヌーが上達し、2、3年後には救助の補助を担ってくれるほどでした。

 その後、参加が途絶えていましたが、久しぶりに再会した彼女は20歳のレディーになっていました。小学生の頃はハグもしてくれましたが、今回はハイタッチで迎え、お母さんたちとも「来年こそは一緒に川へ」と楽しく語らうことができました。

 今年の大会は中止になったものの、新旧の仲間が顔をそろえ、ひと味違う形で盛り上がりました。

 1964年9月、養護学校小学6年の時、学校の近くを東京オリンピックの聖火リレーが通るのを見に行った記憶がはっきりと残っています。その後に開催されたパラリンピックを契機に日本でも障害者スポーツが少しずつですが、盛んになり始めたのではないかと思います。

 中学生になり、いろいろなスポーツに興味を持ってルールを工夫して体験したり、野球やサッカーなども観戦しました。そして今、カヌーが私のメインのスポーツになっています。

 京パラがスタートし、4年後の95年に障害者カヌー協会が設立されました。カヌーは身近なスポーツであるという情報発信と多くの障害者が体験できる場づくり、サポートするスタッフを増やす活動が始まりました。

 今では障害の有無にかかわらず、すべての人にカヌーのすばらしさを伝える活動になっています。競技パラカヌーの選手も育ち、パラリンピックや世界選手権大会への参加など幅広い活動になってきています。

 しかし、まだまだ障害者が気軽に使える施設等は少なく、体験する場は限られています。今はアスリートのほとんどは、中途障害の人たちですが、先天性障害者の人たちも参加できるクラスができればと思います。

 今回、「自然との共生」をテーマに私たちの活動を紹介しましたが、山や川の「自然」の中で取り組んでいくこととともに、障害があることが特別でなく、「自然」に活動できることが、これからの目標ではないかと思っています。

       ◇

 江村さんの連載は今回で終わります。


写真 えむら・ひろゆき
1952年生まれ、京都市出身。
京都府立嵯峨野高卒。3歳の時に小児まひにかかり身体障害者(下肢機能障害)になる。京都市中部障害者地域生活支援センターらくなん嘱託。パラマウント・チャレンジ・カヌー京都実行委員長。66歳。