ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる  京都新聞「愛の奨学金」

若者支える善意 励まし、心の交流も
時代超え、広がる助け合いの循環

 
 京都新聞社会福祉事業団は1965年以来、京滋に在住し、家庭的な事情などから教育資金を必要とする高校生や大学生らに毎年、「愛の奨学金」を贈っている。「誕生日おめでとう」コーナーと「奨学金」事業協賛寄付金に寄せられる市民の寄付金などを資金に、寄付者の励ましのメッセージとともに奨学金を贈呈し、奨学生からは感謝の言葉や勉学への意欲などを記した報告が届く。昨年度の報告書などを見ながら、愛の奨学金が時代を超えて果たしている役割を考えた。(学年は今年3月時点)

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愛の奨学金を受けた学生・生徒から届いたメッセージ。寄付者への感謝や勉学への決意などが記されている
 奨学金は、大学・専門学校生が年額14万4000円、高校生が同7万2000円で、返済は不要。奨学生は「思いっきり勉強するという目標を立て、多くの授業を採った。その教科書代はすべて奨学金で賄った」(大学4年)、「公務員を目指していたが、母子家庭で経済的に余裕がなく、奨学金は参考書購入に使った。おかげで試験に合格できた」(高校3年)。使い道は学費、教材代、実習費、大学受験料などさまざまだが、「一円たりとも無駄にしない」(高校3年)気持ちは若者たち共通だ。そこには、寄付者への深い感謝の思いが表れている。

 寄付者からのメッセージは?。「私も奨学生だった。頑張ろう」「主人の介護を18年頑張っている。皆様も負けずに」「私は1級障害者になったが、頑張る」など、若い人を元気づける言葉が並ぶ。また、「毎日の生活を切りつめて生活している。重度の障害者ですが、未来の子どものために送ります」「息子の誕生を機に寄付を始め、32年間。そろそろ終わろうかと思っていた矢先、東日本大震災。少しでもお役に立てるのならノ続けます」と記した人もいる。福祉事業団では、3年前から東日本大震災で京滋に避難してきた子弟にも特別枠を設け支給している。

 メッセージを見た奨学生からは?。「いつまでも人を思いやり、困った人に手を差し伸べられる人間になる」(大学2年)、「恩返しがしたい、と大学では福祉社会学科を選んだ」(高校3年)、「奨学金を受けて少し人生が変わった。心の底からありがたいと感じた」(高校2年)など人生を見つめ直した人は多い。また、「私の夢は私だけの夢でないと思い、力が湧いた」(高校定時制4年)、「被災者としていまだに福島に戻れないが、希望を持ち、前を向いて歩んでいく」(高校3年)などと若者を勇気づけている。

 さらに「稼げるようになれば、愛の奨学金に寄付したい」(高校3年)、「寄付することで、助け合いの循環の一端を担う」(高校3年)と決意する若い人も。愛の奨学金が、お金だけではなく、寄付者と奨学生の心の交流を生み、夢を抱く若者を支え、時代を超えて善意の循環を広げている。

 元奨学生で、助け合いの循環をしている人は多い。東京の男性会社員(44)は「母子家庭で大学時代、アルバイトを覚悟していたが、アルバイトせずに勉強に集中できた。大変ありがたく、大人になって恩返ししたかった」といい、昨年春、50万円以上を愛の奨学金に寄付した。また、大阪の国家公務員の女性(40)は「大学時代、奨学金のお世話になり、今、安定した仕事を得ている。若い人の役に立てればうれしい」と話し、就職後、毎年「誕生日おめでとう」コーナーに寄金する。

 「愛の奨学金」は本年度の申請受け付け中。締め切りは6月10日まで。問い合わせは同社会福祉事業団TEL075(241)6186。