ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる  関西盲導犬協会

30年余で360頭育成 社会の受け入れ不十分
収益の柱は寄付 運営の厳しさも課題

 
 亀岡市にある盲導犬総合訓練センター。関西盲導犬協会が運営する京滋で唯一の盲導犬の育成施設だ。開設以来、30年余りで360頭の盲導犬を育成し、視覚障害者の生活を豊かにするサポートを続けてきた。一方で、運営の厳しさや施設の立地場所の不便さなど課題も少なくない。施設を訪ねた。

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協会の活動と盲導犬への理解を深めてもらうため、年1回、市民向けに開かれているオープンデー。毎年、400〜500人が訪れる(今年4月29日、亀岡市の盲導犬総合訓練センター)
 JR亀岡駅から車で20分余り、大型バスでは通行できない山間部の道路を経て、山中に建つ2階建ての施設。一角には横断歩道などが設けられた訓練場もある。「ここで訓練することは少ない。実際の街と状況が大きく違い、京都市や亀岡市の繁華街や駅、交差点などで行っている」と話すのは広報渉外担当の藤本喜久男さん(49)。緑に囲まれた施設は盲導犬の訓練場所として適しているように思えたが、むしろ逆だという。訓練士(現在5人)は毎日、繁華街などに訓練犬を連れ出し指導している。

 1991年5月には天皇、皇后両陛下が視察に訪れられた施設だが、障害者用のトイレがないなど老朽化も目立ち、時代に合った施設の必要性も高まっている。

 関西盲導犬協会は83年8月に道路交通法に基づき、国家公安委員会から盲導犬を訓練する団体として認定された。全国では7番目の団体(現在は11団体)だったが、当時関西以西には同様の団体がなく、「関西」の名が付けられたという。

 設立時は財団法人で4年前に公益財団法人になった。収益の柱は、寄付や街頭などでの募金が中心で設立以来、変わっていない。公的な援助としては育成した盲導犬の頭数に応じて都道府県から受ける補助金があるが、全体の運営費の1割程度と少ない。1頭の盲導犬を育成(繁殖から2歳まで)するのに、人件費を除いて約300万円必要といい、ここ数年は赤字経営が続く。藤本さんは「さらに多くの事業所への寄付のお願いや募金活動に加え、支援していただける賛助会員(現在1236人・事業所)の拡大に力を入れたい」と話し、前を見据える。

 全国で活動する盲導犬は昨年度末時点で1010頭。昨年度は138頭(うち関西盲導犬協会は10頭)の盲導犬が育成されたが、実働頭数はさほど増えていない。盲導犬は通常2歳から10歳まで活動し、引退する背景もあるが、訓練士でもある岡本祐己さん(34)は「社会の受け入れが進んでいない面もあり、盲導犬と生活することに躊躇(ちゅうちょ)するユーザーもいる。街で盲導犬に出合っても、触ったりしないで、少しでもユーザーの歩行のお手伝いをしてほしい」と要望する。

 介助犬や聴導犬を含む身体障害者補助犬法が2002年5月に成立し、ホテルやレストランなど多くの人が利用する施設では盲導犬の受け入れを拒否できない。しかし、同協会にも「入店するのを拒否された」という相談は後を絶たないという。盲導犬の活躍の場がさらに広がるには、市民側の意識の高まりが欠かせない。


盲導犬と街で出合ったら…

〇ユーザーが判断に迷っているような時は「何かお手伝いしましょうか」と声掛け
〇誘導する時は左ひじか左肩をユーザーに持ってもらい、半歩前を歩く
〇盲導犬を触ったり、見つめたり、話しかけたりしない