ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる  障害のある人の海釣り体験

「遊び」通し触れ合い 家族らも楽しむ
手厚いサポートで安心

 
 京都・丹後の海で、障害のある人と家族らが海釣りを楽しむ「みんなで海釣り─障害のある人の体験講座」が8月23、24の両日、宮津市の府立海洋高などで開かれ、介助者や大勢のボランティアの協力を得て、野外での「遊び」の楽しさを全身で体感した。

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支え合いながら、遊びの楽しさを味わった海釣り大会。「釣れた」の歓声が飛び交った(宮津市・府立海洋高桟橋)
 京都新聞社会福祉事業団、神戸新聞厚生事業団などの主催で今年が17回目。京都、滋賀をはじめ、兵庫、広島などから計194人が参加した。初日は宮津市の府立青少年海洋センターで魚や健康に関するクイズなどを楽しみ、親子で相談しながら回答する姿もみられた。

 高校3年の息子と参加した多田千景さん(52)=兵庫県猪名川町=は「昨年、初めて参加し、息子が釣った小さな魚を家で魚拓にし、喜んでくれた。そんな子どもの姿を見るのがうれしかった」といい、「子どもと外出する時はいつも介助者になるが、ここでは私も釣りを楽しむことができる」と喜ぶ。32歳の息子と一緒に夫婦で来た馬場正和さん(69)=神戸市=は「外に連れ出したいと参加し、今年で6回目になる。最初のころは不安そうだったが、多くの人の気づかいで、今は宿泊も釣りも落ち着いて楽しんでいる」と話す。心臓に障害がある森田一男さん(66)=神戸市=は「手厚いサポートがあり、安心できる。参加してよかった」と満足そうだった。

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ベテラン釣り師から救命胴衣を身に付けてもらう参加者(海洋高)
 介助者として参加している人も満足な様子。29歳の障害者と来た犬島隆寛さん(26)=京都市=は「ここでは周りの人たちが助け合い、障害者はあきらめずにいろんなことに挑戦している。その姿をみると、教えられることが多い」という。

 夕食をはさんだ入浴タイムは、介助者が衣類の着脱を手伝ったり浴槽で身体を支えたり、障害の程度に応じてサポートしていた。

 2日目は府立海洋高に移動し、学校に敷設されている桟橋の防波堤で朝から釣り糸を垂れた。救命胴衣を身につけ、サビキ釣りに挑戦した。釣り団体所属のベテラン釣り師や大学生らのほか、海洋高生約50人も協力し、サビキカゴに餌をいれたり、釣った魚を針から外したりした。3年の平山織衣さんは「障害のある方が少しでも楽しいひと時を過ごしてもらえたら、うれしい」と笑顔で障害者と向き合い、4回目の参加という釣り指導の片岡浩さん(46)=大津市=は「みなさん年々、釣りが上手になっている」と感心していた。アジやカワハギ、カサゴなどを次々と釣り上げていた。

 開催当初から運営に携わる自立生活問題研究所長で自身も重度障害のある谷口明広さん(58)は「こんなに長く続くとは思わなかった。安全な釣り場を提供してくれる海洋高の協力が大きい。最近は障害者同士の関係が弱くなってきており、遊びを通して触れ合いを深めてほしい」と話していた。

海釣り体験講座 1998年にスタート。宮津の海洋つり場や神戸の釣り公園で実施したこともあったが、4回目以降は海洋高桟橋で開催。同高生徒や教員をはじめ宮津市社会福祉協議会、日本釣振興会京都府支部、京都府磯釣連合会や釣り具メーカーなども協力している。