ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。

心を込めて制作寄贈 入札で助け合い循環
多彩な人から今年は1600点

 
 「ともに生きる」をテーマにした「第32回京都新聞チャリティー美術作品展」(京都新聞社会福祉事業団、京都新聞主催)が10月16日(木)から20日(月)まで、京都市下京区の京都高島屋グランドホール(7階)で開かれる。芸術家らが「福祉のお役に立つなら」と魂を注ぎ制作した作品を展示し、入場者は寄贈作品を一堂に見られるだけでなく、入札制による寄付金が同事業団の福祉活動の資金になることから、助け合いの循環の場にもなっている。

写真
チャリティー展で入札した作品を喫茶店内に飾っている楠本理事長。「支え合いの輪が循環できれば」と語る(京都市中京区、リ・ブラン京都中京)
 京都市北区の日本画家、三輪晃久さん(80)は第3回展以来、欠かさず作品を寄贈してきた。最近は娘の純子さん(版画家)、時子さん(日本画家)姉妹も作品を寄贈し、親子で協力している。「福祉は、だれかがだれかを支えること。支えてくれ、と頼まれる立場にいることが幸せだと思う」と話す。最初のころは色紙に風景などを描いていたが、最近は3号のキャンバスに、入札者に喜ばれる花をモチーフにした作品を提供することが多い。今年はバラを描いた。「絵筆が持てる限り、これからも協力していく」と話している。

 チャリティー展に作品を寄せるのは、著名な陶芸家や画家、版画家をはじめ、宗教家、文化人、漫画家など裾野は広い。吉永小百合さんや八代亜紀さんら芸能人もみられる。今年は約1400人から約1600点が寄せられた。「釣りバカ日誌」で知られる漫画家の北見けんいちさん(77)=東京=は「京都が好きだから協力している。毎年、チャリティー作品を描くのを楽しみにしているし、何度か、会場にも出向いている」といい、今年の開催を楽しみにしている。また今年、「ピエロとサーカス」の作品を寄贈した俳優の由美かおるさん=東京=は「みんなが幸せに生活できることを願い、少しでもそのお手伝いができればうれしい」と寄贈の動機を語り、「真心込めて作った作品を、多くの人に見ていただけるのは大きな喜び」と感謝している。

写真
由美かおるさんの「ピエロとサーカス」。「ピエロのように、みんなをハッピーにさせる人になりたい」との思いが込められている
 京都市中京区の繁華街に3年前に開設された福祉施設「リ・ブラン京都中京」。障害者がキャンドルやマフラーなどを製造する作業場が2階に、1階は喫茶店で壁には大小の絵画が飾られている。「各種のチャリティーで購入した作品ばかり」と話すのはこの施設を運営する社会福祉法人・白百合会の楠本浩子理事長(77)。白百合会では同事業団から織物の機械や車の購入費などで援助を受け、「入札することで、助け合いの循環がしたい。チャリティーはほぼ毎年参加している」といい、自費で入札、購入してきた。「店内の作品を見て、チャリティー美術展に足を運び、入札する人が増えればうれしい」と期待する。

 昨年のチャリティー展での総入場者数は計9325人で、5452件の入札があった。多くの人が助け合いの輪に参加し、福祉活動を支えている。次ページ>>

チャリティー美術作品展 上村松篁氏や梅原猛氏らの呼びかけで、1983年に第1回展が開かれた。この時の作品寄贈者は約600人で、現在は2倍以上に。2年前から最低入札価格は1万2000円になった。