ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

京都新聞社会福祉事業団
50周年記念フォーラム

 
写真
いのち、悩み、出会いなどについて語り合う島田氏(ステージ右)と川村氏(同中央)=京都市中京区・京都新聞文化ホール
 京都新聞社会福祉事業団の設立50周年を記念した「ともに生きる」フォーラムが11月24日、京都市中京区の京都新聞文化ホールで開かれた。幼いころ受けた虐待体験から、虐待の根絶を願う活動をする兵庫県児童虐待等対応専門アドバイザーの島田妙子氏と、仏の教えをもとに幅広い人たちの心の悩みに向き合う真宗大谷派僧侶の川村妙慶氏が登壇、2人の笑いも交えた講演と対談に、会場の約300人の聴衆は、大切な命をどう守り、支え合う社会を実現していくかについて考えを深めた。


講 演




対 談



想地獄にはまるな………川村

地域力で子を救う………島田



司会 それぞれの講演を聞かれたご感想から。

川村 島田さんは出会われた人たちの言葉を見逃さずに生きてこられた。マッハ先生に出会わなかったら、どうなっていたか。

島田 きっと私はあちらの世界に行っていたのでは(笑い)。先週も先生が校長を務められている学校で恩返し講演をさせてもらった。

川村 出会いにはいい出会いも辛い出会いもあるが、立ち止まって自分に問いかけることがスタートラインになる。

司会 京都新聞に連載された島田さんの原稿を読んで、自殺を図るお父さんの苦悩の場面が印象的でした。

島田 父には生きていてほしかったし、亡くなった時は悲しい涙よりは悔しい涙が出た。父は孤独すぎた。救える命だった。だから、虐待で犯罪者も死ぬ人も出したくない。

川村 今日もこの会場に来る途中、「きょう、死にたいよ」とのメールが来た。「だれが言っているの」といったら「私が…」と返信がくる。「あなたが死にたいと言っているのであって、心臓さんに聞いてみてください」と言った。「想地獄」にはまっていて、想像でものを言っている。心臓はその人が作ったものでない。人は、自分の思いで全て動かし、出来ていると思っているが、そうではない。きょうの講演のサブテーマに「自我を生きる者からいのちを生きる者へ」としたのは、こんな思いから。

司会 全国の児童相談所が昨年度対応した児童虐待の件数は7万3765件で過去最多を更新した。地域を含め、子どもたちを見守る力が希薄になっているのではないか。

島田 児童相談所には、夜中でも通告は夜中にもあり、どこの児童福祉相談所も手いっぱい。相談員になるには児童福祉司の資格が必要だが、子どもの命を助けるのになぜ難しい資格がいるのか。地域のおっちゃん、おばちゃんの力がどうしても必要だ。「ファミリア・ストレンジャー」という言葉があるが、顔は知っているが、名前も知らない見慣れた他人のこと。こうしたことを解消するだけでも状況は変わってくる。向こう三軒両隣りの交流が大事だ。

(司会は京都新聞社会福祉事業団常務理事 直野信之)