ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

「綾部のサポーター制度」
地域現状に合わせ 多様な支え合い
住民多数が参加、広がる自主活動

 
今年4月から特別養護老人ホームへの入所が原則的に要介護3以上の人に限定されるなど制度が大きく変わり、介護度の軽い高齢者は家庭を中心にした地域が支える方向になりつつある。地域の支援には住民の助け合いの意識向上が欠かせないが、綾部市社会福祉協議会が中心となったサポーター制度は支え合いの輪を広げる原動力になっており、その取り組みを紹介する。


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出前カフェでお年寄りと談笑するサポーターたち。地域福祉の重要な担い手になっている(綾部市西部地域包括支援センター)
 綾部市の中心にある福祉ホール。市社協などが入る同市の福祉の拠点だ。職員やケアマネジャーら関係者だけでなく、サポーターと呼ばれる一般市民の出入りも多い。「近所のお年寄り、奥さんが亡くなってからあまり外で見かけないんや」「傾聴ボランティアならいつでもやるし、いうてや」「サポーターたちは気楽に声をかける。傾聴ボランティアは家の中に引っ込みがちなお年寄りから話しを聴く活動だ。「サポーター制度が誕生してから、地域福祉が一層、活気づいた。電話もひっきりなしにかかる」。市社協事務局長の山下宣和さん(46)も満足そうだ。

 サポーター制度は、認知症者への正しい理解を国民に広めるため、国が1995年度から取り組んだが発端。綾部市では96年1月に、サポーターを指導する講師の養成講座が開かれ、山下さんや施設職員ら合わせて4人が参加した。「4人で何ができるのか」との不安とともに、「綾部では認知症だけでなく、独り暮らしや老々介護家庭も増えている。綾部の現状に合わせたサポーター制度を作ろう」と意見が一致した。

 それからの充実ぶりは早かった。約1時間の基本の養成講座を受けた市民は「認知症サポーター」に、さらに綾部の高齢者福祉の現状などを独自の教材をもとに学習する講座(約1時間)を受講した市民には「シルバーサポーター」にも認定することにした。第1回の市民向けの講座を96年8月に開くと、「忙しくて出席できなかった。うちでも開いてほしい」との要望が寄せられ、その後は人権集会や寺の檀家(だんか)向けの集まりなど要請があれば地域に出かけ、「出前講座」として次々と開催した。現在の認知症サポーターは児童も含め8千人を超え、人口(約3万5千人)の4分の1近くに。サポーター数の人口比率では全国(市域分)4位という。独自のシルバーサポーターも2千人を超えた。こうしたサポーターになった市民の中から「もっと福祉のことを学びたい」との要望が上がり、介護福祉士や大学教授ら専門家が講師となった5日間の講座(約20時間)を2009年に開講し、修了者は「ゴールドサポーター」に認定した。このサポーターも現在331人に上るという。

 各サポーターになった市民に、とくに福祉活動は義務づけられていないが、「サポーター仲間とおしゃべりサロンを立ち上げた」「出前型カフェを始めた」など自主的な活動が広がっている。傾聴ボランティアには昨年度、延べ約2300人のサポーターが活動した。サポーターの一人で昨年、ゴールドサポーターになった60代の女性は「仕事からも手がはなれ、少しでも地域のお役に立てればと学んだ。サポーターになって、日常生活の中でも支え合いの意識は高くなった」と話す。山下事務局長は「これからは、高齢者の求める福祉とサポーターの市民とをつないでいくコーディネートの役割がより重要になってくる」と制度の充実に向けた課題を話している。