ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

「甲賀市のふれあいいきいきサロン」
みんなで支え合う 拠点通して実践
市内201地域ほとんどにサロン誕生

 
 滋賀県甲賀市は、2004年に周辺5町(水口、甲賀、甲南、土山、信楽)が合併して誕生した。人口は現在約9万3000人だが、65歳以上の高齢者は5人に1人で年々、増加している。お年寄りらの閉じこもりを防ぎ、いつまでも健康で長生きを、と地元社会福祉協議会が中心となって「ふれあいいきいきサロン」の開設を働きかけてきた。今では市内全201地域のほとんどに誕生し、それぞれ工夫を凝らした活動を続けている。高齢者らを地域で支え合うことの大切さが指摘されるなか、甲賀市のサロンを訪ねた。


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百歳体操で体をほぐすサロンの参加者たち。50代から90代と年齢も幅広い(甲賀市水口町・東名坂草の根ハウス)
 国道1号を少し住宅街に入った同市水口町の東名坂草の根ハウス。毎週木曜午前に「みんなの居場所」と名付けられたサロンが開かれている。「おはようございます」。元気なあいさつとともに近隣のお年寄りらが次々と集まる。毎週、20人以上が参加する。サロンを切り盛りするのは民生委員の坂田幹和さん(66)。イベントの企画をはじめサロンの広報紙も定期的に作成している。サロンではまず約40分の「百歳体操」で体をほぐしたあと、飲み物やお菓子を前に自由なおしゃべりタイムが1時間ていど続く。花見や食事会、カラオケ、体力測定などの企画も随時、取り入れている。

 サロンは発足3年、当初から参加している近所の渡邊政子さん(70)は「初めは3、4人の参加だったが、回を重ねるごとに増えてきた。坂田さんがいろいろと工夫してくださるし、何よりしゃべるのが楽しく、元気になる」と喜ぶ。食事会では得意のそば・うどん打ちで接待することもある坂田さんは「この地域は新興住宅街で、人と人の関係が希薄になりがち。サロンを通してお互いを知ることで、みなさんが元気に過ごしてもらえば」と地元のために尽力する。

 甲賀市ではこうしたサロンは合併前からいくつかできていたが、市が07年に作成した市地域福祉推進計画のなかでサロン活動を通した福祉の推進を位置づけ、甲賀市社協が積極的に設立を促した。「地域住民が地域の人を支える」を目標に、サロンは基本的に地区単位とし、参加者も20人程度の少人数とした。スタッフは民生委員や健康推進委員らが中心となっているが、退職後の男性や子育てに区切りのついた女性らも協力している。開催回数は毎週のところもあれば、2カ月に1回のサロンもあり、同社協地域活動支援課長の山下芳史さん(55)は「スタッフ、参加者みんなで話し合いながら、地域の実情に合わせて運営してもらっている。楽しく、気軽に、無理なく―がふれあいサロンには大切」と話す。

 各サロンの運営資金は、主に社協と地元の区から補助している。社協分は市民から寄せられた共同募金や寄付金を充て、昨年度で計370万円が補助された。区も数十万円単位で補助している地域もあり、「みんなで支え合う」考え方が基本となっている。「うちのおばあちゃん、亡くなるまでサロンを楽しみにしていた。ありがとうございました」。こんな礼状が区の役員やサロンのスタッフにしばしば寄せられるという。

 各サロンの悩みは内容がマンネリ化しやすいこと。このため、社協では定期的に研修会を開き、サロン間の交流に努めている。山下さんは「年を重ねたスタッフの引退とともに新たなスタッフの確保など課題も多いが、地域で安心して暮らしていけるサロンづくりに努めたい」と話している。